チャップリンの独裁者

忘れもしない、今から50年前に、チャップリンを初めて映画館で鑑賞した。「ビバ・チャップリン」というシリーズで、チャップリン作品が映画館で次々とリバイバル上映されたときのことだ。自分が鑑賞したのは叔母に連れられて行った有楽座である。
そして同じ有楽町で再びチャップリンが蘇る。すごいイベントが開催されている。初日からすごい熱気だ。劇場は満席。


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あの頃を思い出す。あの頃見たチャップリンの『独裁者』は、自分にとって半分以上わからない映画だった。その後何度もこの映画を見て、何度も多くの映画ファンにチャップリンの良さを伝えようとするが、なかなか伝わらないまま50年が過ぎる。途中、チャップリンの上映権が日本で失われて、20年ほど前に劇場でチャップリンが上映されても、当時働き盛りの自分は映画館に行けなかった。

そして再び映画館でチャップリンの映画を見ると、やはりチャップリンの映画は映画館で見る映画だったのだ。テレビやオンデマンドで見てももちろん素晴らしいのだが、映画館の空気でできれば大勢のお客さんとともこの時間と空間を過ごすことが学習なのだ。チャップリンを受け入れ学ぶ、という行為なのだ。ではその学びとは何か?


それは「抗い(反抗)」である。チャップリンの悲喜劇は、その場で見てもわかりにくいときがある。わかりにくさを意識するとチャップリンから遠のいてゆく。むしろ単純にパントマイム的な面白さを純粋に楽しめるのがチャップリンの魅力なのだが、しかし彼の作品の根底には常に「抗い」がある。その典型がこの『独裁者』だ。政治であれ社会であれ、世の中は何かに守られそして支配されている。時にはその支配が守りではなく、残虐な行為となるとき、人々はそれに抗う必要がある。しかし市井の人々にはその力がない。ひとりの反対者が声高に叫んでもそれは力になりえない。

この映画はたまたま従軍したユダヤ人の床屋と独裁者ヒンケルがそっくりで、たまたま偶然に入れ替わる、というラストで、とてつもないことが起きる映画だ。その瞬間まで人々は独裁者を熱狂的に支持している。しかし床屋がマイクで熱弁を振るった途端、世界は形を変えるという展開だ。

この映画が公開されたとき、日本は公開が許されず、第二次世界大戦が終わって15年経った1960年の公開され大ヒット。そしてキネマ旬報ベストテン1位に輝くなど、多くの支持を得た・・・・
ここが問題だと思う。日本はこの映画が公開されなかった国なのだ。

この映画を見て思ったのは、先に射殺された元首相のことだ。人の命が消されて支持されてはいけないが、あの人物こそまるでヒトラーではなかったか。そしていまも形を変えたヒトラーに日本は支配されていないだろうか。

映画のあと、大野裕之氏の素晴らしい解説でこの思いを確信する。大野氏は、この映画がいま見直される必然があると解説する。ヒトラーの発明したこととは「敵を作って自らの支持を得る」という手法だという。それはネットや愚かな(特に日本の)メディアを操作して、またたく間にそれまで少数政党だったナチスを世界の中心に押し上げたことで立証できる。日本だと「維新」現象。彼らをナチスと置き換えれば、この映画の必然が見えてくる。

大野氏はさらに、チャップリンがユダヤ人ではなかったのに、メディアから「あなたはユダヤ人ですか?」と聞かれて、一切何も応じなかった、というチャップリンのセンスにも注目している。チャップリン自身が「平和」というアイコンであるとすると、彼がアメリカを追い出され、沈黙したこと(それは「抗い」)と、その後長い時間を経て呼び戻されたこと。彼の人生そのものが、映画で示されたテーマに折り重なってゆくことの重みを感じさせるのである。

かねてからいうとおり、この国はすでに終わっている。この国に未来はない。しかし、この映画を見て、何かを感じた人がいるならば、そのことを大勢の人たちに伝えなければいけないと思う。大野裕之氏もそのように最後締めくくっていた。この国は終わっているのだ。



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