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漂流 日本左翼史  池上彰・佐藤優

真説日本左翼史」から「激動日本左翼史」 そして本書へと3部作で綴られた日本左翼史の歴史を俯瞰で確認することができた。素晴らしい企画だったと思う。歴史的な偉業とも言える。


”真説”では戦後日本の労働運動を半ばGHQがリードして作り出したことが書かれ、”激動”ではこれらの左翼運動が暴徒化してゆく過程が書かれていた。特にこの”激動”の激しい展開になぜか心が躍る。しかしそのあまりの過激さがムーブメントでありながら人を傷つけ殺める、という結果には組することができない。


そして学生運動が労働運動へと変化し、その後左翼が埋没して消えてゆくまでが解説される。すごく面白かった。序章で池上彰さんが「左翼の功罪を学ぶことで、真の教養を身につける。」というコンセプトで進んでゆく。


第一章 「あさま山荘」以後
あさま山荘」の敗北から学生がノンポリ化してゆくまでは”激動”にかかれているが、ここでは学生運動が地下活動化して、さらに多くの犠牲者を伴うテロ事件(三菱重工爆破事件など)を起こしたことと、学生運動最後の象徴的なイベントとして「三里塚闘争」がある。三里塚の農地が満州からの帰還者で開拓された場所で、そこを飛行場とすることに反発する農民と学生運動が合流するという形で長い闘争の歴史が刻まれた。しかし学生側が例のごとく内ゲバ的に分裂して崩れてゆくまでが示される。


第二章 「労働運動」の時代
もともと総評はGHQが共産主義者を排除するために組織されたものだが、1970年代に入ると安保闘争で敗れた学生が社会に出て、労働運動に形を変えて闘争を始める。社会党が勢いづいたのは労組の影響があって、順法闘争というストライキを中心とする運動が過激化してゆく。

労働者の自殺は、合理化最大の問題であってこれは疎外の問題である。

この定義付けは、このあとの左翼運動を形式化している。疎外、つまり物が人が支配する時代、そして人間が本質を失ってゆく時代へ変化することを予兆させる。


第三章 労働運動の体調と社会党の凋落
ここから労働運動が過激になるのと平行し、大量消費社会が到来する。すると会社員を運ぶ国鉄(いまのJR)のストで影響を受けた乗客が暴徒化するという事件(上尾事件など)が同時多発的に発生して社会問題となる。海の向こうでは、チリで自由投票による社会主義政権が生まれるが、それをアメリカが阻止。ピノチェト(M・フリードマンが支持)によるクーデターがその後の大量虐殺を生んだことは有名だ。国内では国鉄の貨物輸送の利用が下がり、ヤマト運輸(小倉昌男)による個人から個人への輸送が中心の時代へと変化してゆく。


第四章 「国鉄解体」とソ連崩壊
ここで決定的なことが起きる。ソ連がアフガニスタンに侵攻し、それを社会党(社会主義協会)が支持するという事態に並行して、国鉄が民営化されてゆく。つまり社会党の後ろ盾だったソ連が暴徒化して崩壊の道へと向かうことと、国鉄という労働運動の中心的存在が失われて、思想と場所(組織)の両方を左翼が失っていったのだ。ここは決定的だ。


終章 ポスト冷戦時代の左翼
ここまでで本書は一旦、すべての左翼史を総括し、ソ連とともに消失した社会党と生態系を変えて生き残った共産党という仕分けをして終えている。浅田彰さんが26歳のときに書いた「構造と力」によって、社会主義革命などの”大きな物語”より小さな目の前にある差異の重要性が唱えられ、いよいよ左翼の存在は消えてゆくのである。


佐藤優さんは総括として「労働力の商品化という資本主義の絶対矛盾にどう対峙するかが左翼の問われているとし、その果にあるウクライナ戦争が弱者を直撃していることを踏まえ、以下の言葉で締めくくっている。

社会正義を実現するには、人間の理性には限界があることを自覚し、超越的な価値観を持つ必要がある

超越的な価値観とはつまり、左翼という立場的なことではなく、イデオロギーを超越したある種の宗教観のようにも受け取れる。これは聖書を読み解くような難問である。しかし、我々人類はもはや先のない風前の灯を目の当たりにしている。そう思うと、これらの左翼史を正確に読み取り総括することは極めて重要であり必要なことだと思う。


最後に、知的なお二人の対談で進むこのシリーズだが、佐藤優さんの発言にはやや偏りがある。そして彼が主張する昨今のコメントにも、やや現実的でないと思しき発言があるので注意が必要ではある。


いつも思うことは、どんな記事やどんな本、教科書にだって嘘があるということだ。
何も信用してはいけない。情報と教養を混ぜこぜにしてはいけない。




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