夢遊病者たち② 「分断された大陸」 クリストファー・クラーク著
前回のづづき
第二部 分断された大陸
1914年7月28日にオーストリア=ハンガリー帝国がセルビアに最後通牒することで始まった戦争をひとことで開戦理由を説明することはできない。大きく言えば、ドイツと英仏露の三国など大国による代理戦争へと発展し、世界中に死者を出す大惨事となるのだが、そのきっかけは複雑だ。「第三章 ヨーロッパの分極化」では、もともとドイツをフランスがオーストリアをはさんで対立状態にある中、フランスとロシアは親密化して、ドイツを分断させようと画策していた。植民地政策を推進してきたイギリスは当初それを傍観していたが、フランスとロシアに加担することで、ドイツの孤立化を目論む。「第四章 喧々ごうごうのヨーロッパ」では、より具体的に大国の内実がえぐられてゆく。
とにかく当時、ドイツの脅威はヨーロッパ全体の脅威だったようだ。その理由のひとつと言われているのが「タンジール事件」や「アガディール危機」などモロッコをめぐるフランスとドイツの対立もあり、その後の対立は拡大してゆく。フランスの内政干渉を嫌ったモロッコがドイツに頼ったことで、フランスと友好関係にあるイギリスが加勢してドイツと対立するなど混乱が広がる。モロッコというと時代は異なるが言うまでもなく映画「カサブランカ」の舞台である。
ところで各国とも軍部の台頭が目覚ましく、遡ること1894年にフランスで起きた「ドレフュス事件」はこの時代を象徴する。ロマン・ポランスキーの「オフィサー・アンド・スパイ」という映画でも示されたとおり、いわば人種的な問題が絡み合っていることも示している。また、同じ頃、イギリスなどのメディアについても批判的な意見がある。メディアに翻弄されて移ろいやすい政治のあり方なども複雑化している。
An Officer and a Spy / J'accuse (2019) - Trailer (English Subs)
「第五章 バルカンの混迷」ではロシアにフォーカスする。当時優柔不断だったロシアは、フランスと同盟を結びドイツに圧力をかける。ロシアとの同盟を結んだのはフランスのポワンカレ。そしれ彼は軍拡の道を進む。「第六章 最後のチャンス」で、ロシアとドイツの皇帝が密談して交渉するものの合意には至らず、バルカン半島を巡る争いは最後の局面に直面してゆく。この頃はもうヨーロッパの緊張が沸点に達しており、いつ何が起きても戦争状態となることは明らかだ。しかし、当事者は最後の最後まで戦争など起こらないと思っていたという節もある。
The Lady Vanishes (1938)
彼らはもうこの頃すでに「夢遊病者」のようになっていたのかもしれない。
つづく・・・
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