夢遊病者たち③ 「危機」 クリストファー・クラーク著
前回のつづき
7,000万人の兵士を動員し2,000万人近い死者を出した未曾有の戦争現場で何が起きていたか?それはいくつかの印象深い映画が示してくれる。
「1917 命をかけた伝令」もそのひとつで、主人公は最前線目指してその戦いを止めようと命がけで走る。
本題に戻ると「第七章 サラエボの殺人」ではまさにフェルナンド大公がセルビアのテロリストに暗殺される瞬間を示し、セルビアの公式発表は「オーストリアに原因がある」と断じたことで急速に「第八章 広がる輪」で、オーストリアがドイツに同情を求めオスマンとブルガリアを従えて最後通牒を発する。「第九章 サンクトペテルブルグのフランス人」ではポワンカレがロシアと合意することで、ドイツ包囲網を固める。「第十章 最後通牒」に至ってはいよいよ局地戦が始まり「第十一章 威嚇射撃」でロシアがドイツを攻める狙いが経済的な混乱にあったことなどが示される。ここは極めて重要だ。この戦争はある種”名誉の戦争”を印象づけるが、実はロシアはフランスからの借款があって、ここでドイツから賠償金を得ることができれば、自国の負債が緩和されることを狙っていた。まさに経済的な混乱を引き起こすことがロシアの目的だったことが想像できる。ついでに言えば、日露戦争で負けても賠償金負担はなく、第一次世界大戦でも戦勝国側の立場で存在感を示し、ロシアを軸とする周辺国を巻き込んで共産圏を構築する礎がここにあることは明らかだ。
「第十二章 最後の日々」ではイギリスの参戦などで本書は終わりを告げる。第一次世界大戦開戦までが語られ、終戦に至るまで各国で革命が同時多発的に発生し、戦争は終結ではなく休戦状態となってゆくのだが、そのことはここで書かれていない。「結論」の中で著者は、ユーロの危機は1914年の再来を懸念している。第二次世界大戦後、一切の戦争を拒否し難民の受け入れを厭わないドイツが、当時「戦争を選択した」ことの事実をこの本は決定的に示している。
本書に対する批判も多いようだが、ドイツ語圏で本書を巻き込んだ議論が活発に行わたことは重要だ。残念ながら我が国にその波を押し寄せて来なかったようだが、この壮大で残酷とも思えるドラマの主人公たちはまるで「アンナ・カレーニナ」や「山猫」の舞踏会を演じる人のようだ。そして、
用心深いが何も見ようとせず、夢に取り憑かれており、世界にもたらされる恐怖の現実に対しても盲目だった
のは、ここに出てくる人たちだけでなく、それを支持した国民と政治と国民を結ぶメディアの無批判な報道などが、世界を狂わせてゆく。特に、敵国を作って自国のポピュリズムを煽り立てるメディアや政治手法は同意しがたい。そしてそれはいまもこの国で起きていることだと思う。
「西部戦線異状なし」
Im Westen nichts Neues | Offizieller Trailer | Netflix
「彼らは生きていた」「アラビアのロレンス」「戦火の馬」
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