#ダリチョコ の映画とグルメ

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放蕩息子帰還せず(「惑星ソラリス」を見て思うこと)

タルコフスキーの「惑星ソラリス」を数十年ぶりにじっくり鑑賞。かつてこの映画を見た時、そのあまりにも退屈な内容に圧倒された。宇宙ものの映画とくれば戦闘シーンや宇宙船のシーンを期待するが、ソビエトモスフィルムで作られた映画は、映画という概念を超越した作品だった。びっくりした。

東京の首都高を未来都市として描いたシーンは有名だが、延々と映されるこのシーンに意味はないらしい。むしろこの映画は密室で描かれるドラマで、その深淵な内容はとてつもなく深く、人間を掘り下げる作品だ。

ソラリスという惑星自体が知的生命体で、人間の想像するものを具現化する。このドラマでは死んだはずの妻ハリーが現れ、主人公のクリスを悩ませ、妻ハリー自身も本当の妻ではないことを自覚し悩むという話しだ。

タルコフスキーの映画で幾度となく繰り返される空中浮遊のシーンはこの映画でも印象的に使われる。妻との性的な対話に知性が重なるという複雑なシーンである。

ブリューゲルの「雪中の狩人」が画面に示されるシーンも暗示的だ。作品の全景を写した後、絵画の細部をワイドスクリーンが大写しにする。狩人、犬、スケートをする人びと、家々など。これらが意味することは、世界が大きな枠の中で浮沈すること。ブリューゲルの代表作「バベルの塔」を連想すればわかる通り、この作品もまた貧富の差や人生の浮沈を物語るもんと解釈できる。そしてそれは延々と繰り返される、まるで輪廻のように・・・

実はここからがこの記事の本題なのだが、実は死んだはずの親から電話があった。公には、自分の両親は死んだことになっている。しかしどうやらまだ高齢で息も絶え絶えに生きているらしい。かけがえのない親のことではあるが、自分にとってはもう存在しないものとなっている。ことの成り行きは、自分たちが家族で転勤しているとき、母親から送られてきたランドセルに入った手紙。翌年から入学する子供宛の手紙に「もう二度と会うことはないでしょう」というようなことが書いてあった。この手紙の意味はともかく、まだろくに字も読めない子供宛にあまりにも残酷な内容の手紙をよこしたことで親子の縁はこのとき完全に断絶した。この後数年して父親から一度だけ電話があって、「自宅を建て替えるから。じゃあな。」のひとことだった。どうも妹家族と同居することを目的に家を建て替えたらしいのだが、こちらはもうとっくに親は死んだものと思っているのでなんのことかわからなかった。今思えばこの時の一方的な通告は、遺留分を放棄させる意味があったのかもしれない。遺留分とは相続に与えられる一定の権利だ。
「二度と合わない」「じゃあな」と二度までも絶縁通告をしておきながら、自分たちが年老いて先行きがなくなってから泣きついてくるとはあまりにも人として常軌を逸しているとしか思えない。もちろんこれらの過程には両親だけでなく、妹や妹の夫などの存在が見え隠れするのだが定かではない。

映画「惑星ソラリス」のラストは、レンブラントの「放蕩息子の帰還」に例えられる名シーンだ。身を持ち崩した息子が父のもとへ帰ると、父は息子を許すというものだ。「惑星ソラリス」もまた、知的生命体ソラリスの陽のもとで、自分の人生に行き場を失ったクリスが、最後に父親にすがるシーンが、実はソラリスの幻影だった、という恐ろしいオチになっている。息子と親の関係は逆だが、自分を捨てた親が泣きついてきたことを許せるか?というのが自分の逡巡となっている。自分は放蕩息子かもしれないが、放蕩息子に泣きつく親を許せるかどうか。言葉で許すことはできても、経済的に支援することなど絶対できない。たとえ親が野垂れ死ぬことがあったとしても、1円たりとも援助することなどできない。

元首相殺害事件とそれを巡る国葬の問題にくさびを打つ、足立正生監督の映画「Revolution
+1」という映画が、「惑星ソラリス」とこの社会、あるいは自分の在り方を示す助けをしてくれている。この映画の公開イベントで足立正生監督がこの国の政治は底が抜けていると語る。映画では国葬会場を爆破するシナリオを変更して、別の形に変えたエンディングを用意するのだが、この話題の中で、結局この社会の外に出たつもりが外にはもっと大きな外があった、という話しがでてきて、これはまさに「惑星ソラリス」だと思った。そうなのだ、この社会、あるいは自分の置かれている環境もまた終わりのない輪廻のようでもある。



つまりここにいる放蕩息子はいま、捨てられた親から帰還命令を出されているが、一切帰還する予定がないことを言いたいのだ。

放蕩息子帰還せず

これが自分の結論だ。そしてきっとこの決断が最悪の罰として将来の自分に降りかかるこを自覚している。





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