化粧をしなおす銀座

4月24日、日経「春秋」より。


成瀬巳喜男監督「銀座化粧」には、戦災から復興する東京・銀座かいわいの風景が多く登場する。小さな子が表通りから路地を抜け橋から川面を見下ろす。小さな木船を目にし、その先の海に思いをはせる。町を流れる川は生活や商売を支え、皆の心に溶け込んでいた。



▼ほどなく一帯の川は埋め立てられ、水ではなく車が流れる高速道路になった。銀座を囲む川の跡は2階建ての商業施設が建設され、屋上を高速が走ることに。商店会などの作るサイトによれば、当初は12階建てのビルにする計画もあったそうだ。こちらの案が実現していたら、銀座は高い壁に面した町になっていたわけだ。


▼この高速道路が遠からず廃止になる。全長約2キロメートルに達する跡地は歩行者専用の空中遊歩道になるという。植物やベンチなどを置き快適な道にする構想だ。先取りして雰囲気を味わってもらおうと、高速道路を歩く催しを5月の連休に開く。ただし希望者が多く、主催者によれば受け付けは既に終了。次の回を期待したい。


▼米ニューヨークでは2キロメートル超の高架鉄道跡が緑豊かな公園となり住民らが散歩やチェス、大道芸を楽しみ観光客が訪れる場所に変身した。銀座のビル街に誕生する新たな散歩道も東京に魅力をひとつ加えそうだ。舟運から自動車の時代を経て、人間のための空間へ。店だけではなく道までトレンドに敏感な点が銀座らしい。


田中絹代さんが銀座の橋をすたすた歩いて去ってゆくラストシーンが美しい「銀座化粧」



成瀬巳喜男作品らしい辛辣な映画だ。その背景にある銀座の風景もまた変わる。自分のことになるが、銀座というとマクドナルド1号店。行列ができていて、その列に並んで生まれて初めて食べたハンバーガーのあの香り。このあたりは、いまも日本の地価で一等地とされているが、道行く風景も多いに変わった。昔はなんというかもっと高級感のある雰囲気で、夜の巷ともなればこの映画のような豪華さと、タクシーが数珠つなぎに並ぶのも思い出される。


その銀座がまた変わるらしい。銀座も化粧のしなおしを求められているということだろうか。





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