チャップリンとアヴァンギャルド ① 大野裕之著
チャップリン研究の権威、大野裕之さんの本が出たので、図書館で借りて読んでみた。
- チャップリンとアヴァンギャルド
- 青土社
- 本
紳士でありながら放浪者、この矛盾した人物像がまたたく間に世界へ拡散した。そんなチャップリンという存在をアヴァンギャルドという観点から論じた名著だ。すごく面白かった。
チャップリンを敬愛するアーチストは多いが、チャップリンが影響を受けた人物も多い。例えばニジンスキーが演じた「牧神の午後」はチャップリンの「サニーサイド」へのオマージュだが、チャップリンは「ライムライト」でニジンスキーをリスペクトする。
第3章 チャップリンと音楽
ここでは、なんとU2のライブオープニングに「独裁者」が使われている。
コロナ禍で外出制限があった頃、レディー・ガガが「スマイル」を演奏して世界へメッセージを投げかけた。
第4章 チャップリンと言葉
チャップリンが時として極めて強いメッセージを投げけるときがあるが、中でも「独裁者」はその代表であろう。この映画のあと、ヒトラーの演説回数が激減したのは有名だ。「殺人狂時代」はチャップリンがアメリカを追放されるきっかけとなった作品だ。”大量殺人者として、わたくしはアマチュアです。”とは、世界で起きている戦争に突きつける強いメッセージだ。「ライムライト」の”死ぬことと同じように避けられないことがある。それは生きることだ。”も強烈だ。この世界に存在し生きている者は誰も「死」を経験したことがない。
第5章 チャップリンとアニメーション
ここでは主にディズニーとチャップリンの関係を紹介する。チャップリンはディズニーの才能を認め、ビジネス面では「著作権を絶対に手放すな。」とアドバイスしたことなどが示され、その後この二人が訣別してゆくまでについて書かれる。二人に共通する「空を飛ぶ」という夢は、その後アニメの世界では手塚治虫や宮崎駿へも影響している可能性がある。
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