HOW TO BLOW UP ダニエル・ゴールドハーバー監督
シネマート新宿は満席状態だった。男性客が多かっただろうか。
思えば、
この映画を見る前にみた「あんのこと」も、人物の後ろ姿から入る映画だった。病的になった人物がよたよたしながら歩くシーン。しかしこちらは違う。意思のある後ろ姿。彼女は高級車をパンクさせて黄色い紙をフロントガラスに貼り付ける。
ここに集う「エコテロリズム」を目的としたメンバーはテロリストだ。それぞれの過去に様々なビハインドがあって彼らの行動が進んでゆく。
かつてアメリカのテロというと911など被害者としてのテロだったり、「イージー・ライダー」や「狼たちの午後」などの敗北の美学が際立つが、この映画は違う。爆弾のスペシャリストもいない中、素人集団が突き進むテロリズムなのだ。
テロの定義を8人で語り合うシーンが秀逸だ。この映画の軸となるシーン。結論は「キリストもテロリストだったんだ!」ということだ。そのとおりだと思う。
昨年の映画の傾向を「レボリューション」と位置づけると、ことしは少し前倒しに「テロリスト」がテーマの映画が多い気がする。アメリカ合衆国は市民の不服従が保証されているが、日本は憲法をあらためて、憲法に従わない国民を処罰するような書き換えをしようとしている。そのうち歴史も塗り替えられて世界から孤立するだろう。
そう思うと、この映画にもあるとおり「法律で罰せないから自分たちがやる」という意思行動は、この国でもっと普及してもいいのではないか。革命からテロリストへと進化する過程が丁寧に描かれた傑作だ。
若い方にぜひ見に行ってほしい傑作だ。
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