映画評論家への逆襲 ③ 加害の問題


映画評論家への逆襲 (小学館新書 あ 10-1)
映画評論家への逆襲 (小学館新書 あ 10-1)
小学館


第4章 憲法映画論 そして加害と被害をめぐるドキュメンタリーの核心


個人的には、井上淳一監督のこの映画を巡る激論がこの本の中で最も刺激的だった。




映画『誰がために憲法はある』予告編


井上さんが語るこの映画を作る経緯は、安倍政権が数の論理で憲法強行に変えようとする姿勢に反対の意思を示そうとしたことから製作されたらしい。情けないことに、この映画の存在すら知らなかった。自民党草案は①国民主権縮小②基本的人権の制限③戦争放棄をしないという内容で、このままだとオーウェルのデストピアがやってくる。そこで松元ヒロさんの「憲法くん」を題材にして、渡辺美佐子さんの朗読劇を作ろうということになったそうだ。


荒井晴彦さんがこの映画を批判して、①加害の問題に触れていない②9条の矛盾である沖縄について言及していない③天皇制の削除について触れていないことなどを批判する。この話しの中で、荒井さんは武井昭夫氏の言葉を使って、「9条を守るということは、他国から攻められても人を殺さないために、殺されるということだ。」という発言を紹介する。攻撃されて相手を殺すより、侵略されて殺される道を選ぶという意味にも取れる。加害とはこれだ。殺人者となるか殺されるか。「死生観」にも向かう深い議論だ。さらに日本とアメリカの中学生が戦争について話しをしたとき、日本の中学生がパールハーバーのことを知らなかった、という事実に驚愕する。つまりは加害について日本は消し去ろうとしているのだ。この戦争はいったいどっちが始めたものなのか?


このように歴史を歪曲したうえ、自らの憲法違反を無視して強引に憲法を変えようとするのが安倍晋三という人物だったのだ。


2020年8月14日 御成座(秋田)



第5章 デニス・ホッパーとアメリカン・ニューシネマまたは自由の行方について


この話題になると、どうしても森達也監督の「いちご白書」への思いがよみがえる。


「負け」の時代 #森達也 監督「私的映画論」より 

いちごの季節 - #ダリチョコ の映画とグルメ


井上淳一さんは「新しいことをやろうとしたヤツが負ける。希望がつぶされるドラマ。」をアメリカン・ニューシネマの共通項として定義する。これを受けて荒井晴彦さんは「ソルジャー・ブルー」で原住民の側から西部劇は消えた。そしてニューシネマの中でも「さすらいのカーボーイ」が傑作だと言う。森達也さんが「自由に縛られる」というフレーズを使って、自由に憧れ、自由に縛られ、銃に頼る、という流れをニューシネマに重ねている。


2020年7月19日 松本シネマセレクト


つづく・・・


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