シネマ秘宝館84 四畳半から生まれた自主映画
今回のテーマ、
四畳半から生まれた自主映画はタテにヨコにハマに進む
というタイトル。ネイキッドロフト横浜にて行われたシネマ秘宝館84。
林比佐子さんがお怪我をされていて少し間があいて、久しぶりの開催となった。
ご覧のとおり、まるで政見放送のような雰囲気に合わせて、林さんの浴衣姿も季節感があっていい感じ。会場はほぼ満席状態。自己紹介のとき、このしょうもないブログのことまでご紹介いただいてありがたかった。こうなるとこれからもとことんお付き合いさせてもらおうという気持ちになるものだ。
あらためて感じたことは、「作り手は語りたい」ということだ。どれだけ自分の作品にこだわってどれだけ苦労したかなど、自分の作品についてとにかく語りたい。その時間を共有するのが秘宝館の魅力だと思う。今回も多くの作り手が大いに語るイベントだった。
まず最初はらぐすけ監督のショートフィルム2本。
「静謐(せいひつ)と遷化(せんげ)のプシュケ」は、言葉の意味はよくわからないが、この短い映像の中に静けさと息遣いが伝わるクオリティの高い作品だ。らぐすけ監督はかなり繊細で知的な方だと察する。映像の中の”赤”の使い方は、見方によっては日の丸=国家を連想させ、蝶が分断されて死ぬシーンも含めて強いインパクトを与える。素晴らしい作品だ。(ちなみに映画「日の丸」を監督された佐井大紀監督の新作チラシもここで配られていた。)
続いてりんご監督の「恋愛漫画death」の主題歌もすごい!タイトルとは裏腹に子作りに言及するなど、この限りない矛盾を神に問う内容だ。原作は最後に核戦争に至るストーリーらしい。生と死という永遠のテーマをダイレクトに伝える。個人的にはしょーた監督の「そらとぶ時計」を彷彿とさせる。
続いて、
繁田健治監督は、木内一裕監督を介して開演前に紹介を受けた方で、自ら出演した「再会できたね」でヒロイン役を演じた鈴木茉吏奈さんとともに登壇された。
再会でお互いに変化のないことを確認しあう内容で、ギャップがすごい。一旦お別れした彼女がまるでノーランの「テネット」のように逆回ししたように戻って来るシーンも見事。鈴木茉吏奈さんの制服姿は大人気で、休憩時間に多くの方から記念撮影を求められていた。
山村もみ夫。監督は、前回見せてもらった「ストレスフル・スイング」があまりにも素晴らしく、今回見た「大和の兄弟」も不条理な社会からスポイルされた兄弟を描く。ラジオの投書で読み上げられた内容は両親の離婚。別れた両親は自分たちと同じ年齢ののちぞえをもらい、なんと兄弟別々に引き取られてゆく。大和市の地元ネタ満載のドラマ。
続いて、にいやなおゆき監督の「乙姫二万年」は今回のイベントのクライマックス。「すごい!」のひとこと。何も説明できない。
岡山から動画で参加されたにいや監督は、ご自宅に保存されている映画の素材をひとつひとつ解説される大サービス。映画の中で大写しされた車が実はミニチュアだったり、映像のもつ創造性が限りないことを教えてくれた。にいや監督が実際に住んでいたアパートをモデルに作られた映画なのだそうだ。乙姫が何者か?が明かされてゆくものの、それがテーマではないだろう。このおかしな古いアパートのカオスこそがこのドラマの主題のような気がする。
続いておなじみペキサイト監督の「スカイ・フォウル」。ペキサイト監督らしいシンプルでシュールな作品。宇宙船の操縦とゲームのやり過ぎを重ねて、病的な人々を警告する。
最後の田中まもる監督作品は、ウルトラシリーズをアパートに詰め込んで様々なシーンを思い起こさせる凝った仕組み。モロボシ・ダンがアンヌに告白するシーンや、ケムール人を思わせる怪獣など、われわれ昭和世代には馴染み深いシーンが連続する。
今回の秘宝館のテーマ四畳半の意味がこのあたりでほのかに伝わってくる。
「乙姫〜」にしても田中まもる監督作品にしても、この小さな空間から壮大なスケールへとイマジネーションが膨張して破裂するような世界は自由を感じさせる。自由に羽ばたくことをゆるされた人のイマジネーションはときに小さな四畳半のような空間から広がってゆくのだ。
秘宝館に寄る前に、「ルックバック」という映画を見た。あの映画もまた、同じ小さな空間から始まる世界。その先に待ち受ける生と死。偶然だが、こうしたステータスが秘宝館に繋がり広く大勢の方にそのコンセプトが伝わることを期待する。
考えるというより思いつくような世界だった。
何度も同じような思いがするのだが、知らない世界を知る新鮮さを毎回感じさせる秘宝館に感謝だ。まだまだ映像にまつわる知らない世界があることを知る。
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シネマ秘宝館81 新宿ロフトプラスワン - #ダリチョコ の映画とグルメ