世界の凋落を見つめて ① 四方田犬彦著
集英社から2021年に出版された本。それほど厚くないが、内容が濃いので読み応えがある。
四方田犬彦先生らしく、
人間は人間以下のものになろうとしている
という言葉から、2011年を起点に2020年までの世界を俯瞰している。各所で先生が書かれたレビューなどのとりまとめだが、過去10年を振り返るのに有り難い作りになっている。まとめると、この10年間、わたくしたちは何も気づくことができなかった、というものだ。全てはことが悪化してから明らかになる。戦争もパンデミックもそうだ。その時の為政者の姿勢こそ問われるべきだが、少なからずこの国に顧みてまともだった政治家はいない。
葉室麟さんの「秋霜」という小説に孟子の「放伐」についてのくだりがある。
放伐されるのにふさわしい与党議員(すでに殺された御仁もいるが)は多いが、かといって野党がそうではないかとも言い切れない。誠に残念なのは勘違いした右翼だろう。
四方田先生は、これらの凋落が阪神淡路大震災の年に始まり、東日本で拡大し、コロナで止めを刺されたという。権力が行ったのは「真実の封印」と「プロパガンダ言説の喧伝」。スウィフトが「人間とは大地の皮膚病だ」というとおり、人間だけが傲慢にこの地球を滅ぼしにかかっている。われわれが知らされていた真実や正義が、実は大嘘だったことを立証しようというのがこの本だ。
四方田先生は
本書の目的は正義に抗うこと
とはっきり書いている。わたくしもこれを支持したい。
2011
東日本大震災の年。多くを語るのもはばかられる大きな震災を体験した。今年の元旦に起きた能登の震災に、この国の政府はまるで学んでいない。むしろ足の引っ張りあいをする杜撰さだ。ここで重信房子さんに言及している。
2012
自民党が与党に返り咲いた。現時点まで、このことがこの国を滅ぼした最大の要因だと思う。この頃からいちだんとネトウヨが氾濫しはじめた。彼らは概ね公安のまわし者だ。税金で国を悪くしてゆこうという国だ。
2013
安倍晋三政権が「秘密保護法」を成立させた。黒塗り社会の始まりである。
つづく・・・
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