#カモのネギには毒がある 8 「ビジネス化する教育」
第8巻。前回の不知火大学野球部の実態を暴いて、日本社会をも照らしている。
どうも野球部の監督が大学の理事長かた暴力事件から弱体化した野球部の立て直しを求められ、「罰金制度」を導入したということらしい。この監督がやったことは、
①300のルール ②罰金 ③厳しい取り締まり
このみっつ。ここで示されるのが、
ザイオンス効果 「単純接触効果」
テレビCMなどもこの効果の一種で、罰金制度に当てはめると、「心理的な貸し」を作ることで「返報性の原理 」が働くというものだ。安易に会社やチームの先輩に奢られるのは危険かもしれない。
ハーバード大を出た加茂教授はなんと不知火大学に入学しなおし、野球部の1年制が課された罰金を肩代わりして、野球部の罰金制度を破壊しようとする。その時同級生(といっても年の離れた1年制だが)に彼が言うことは、
「他人に自分の人生を握られたくない」
という意思だ。学びとは、
勉強 = ①知る ②理解する
学び = ③疑う ④乗り越える
という4段階があるが、日本のエリート官僚は①と②の「勉強」しかしていない。「学び」という活用段階を知らないというものだ。
そして加茂教授は罰金制度をめぐる学生に、年老いてヨボヨボの鳴沢教授による30分の講義を聞かせる。
ミルグラム実験 人間は一度権威に従うとどこまでも残虐になる生き物
言うまでもなくヒトラーの功罪だ。
原作者の夏原武氏が巻末で紹介する「経済白書」によれば、日本の進学制度が自由主義化が進む過程でビジネス化してしまい、敗戦国を立て直すために国民全体にいきわたる教育を推進したときの精神が失われてしまったという。これは小泉純一郎内閣のときから顕著になったらしい。
世界ランク52位の進学率に比して、卒業率90%は世界的に見ても異例(フランスは3分の1が卒業できない)で、進学率だけ上げようとする政官財にマスコミ(マスゴミ)が宣伝したおかげで、いわゆるFランク大学が増加。そこの体育会系の学生がブラック企業に就職するという循環構造ができあがったらしい。
ここからは個人的な政治に対する意見だが、この国はもともと社会主義的な構造の国だったにもかかわらず、中曽根内閣から小泉、安倍政権で決定的に自由主義化と企業寄り、さらには宗教団体の組織票で成り立つ自民党政治により国を崩壊させてしまったと思う。悪いことに野党も基本的に自民党と同じ立場なので、どちらにころんでもこの国の回復は見込めない。
日本は本来、自分以外の存在を認め、大きな集団で共存共栄をして支え合いながら生きるスラブ系(大家族主義的)な民族だったはずだ。これはいわば社会主義的な民族だったと言える。
そこにアメリカの新自由主義経済を落とし込み、なんでも民営化することで経済成長を止め、長いデフレによる国家衰退を演出してしまった。民営化が全て悪いとは言わないが、行き過ぎた政策は禍根を残す。弱いものは存在すら許されない優生思想。
愛国者として断言するが、日本い新自由主義的資本主義経済は合わないと思う。
★
★
過去の関連ブログ
カモのネギには毒がある 甲斐谷忍(原案:夏原武) 「ドラゴン桜」