パンクの系譜学 ② 諸悪の根源
- パンクの系譜学
- 書肆侃侃房
- Digital Ebook Purchas
まさかパンクの本で経済学や政治学、哲学を学びなおすことになるとは驚きだったが、ここからはいよいよパンクが生まれる源泉であるアメリカの奴隷制度へと話しが進んでゆく。
人類史上最も残酷な奴隷制度を容認したアメリカの歴史で、労働者が作業するために歌ったワーク・ソングがスピリチュアルを経由してゴスペルなどに進化した。この間、南北戦争で勝ったリンカーンは奴隷解放政策をとるが、「ジム・クロウ法」による隔離政策で労働者はますます劣悪な環境へと押し出されてゆく。その後黒人は第一次世界大戦に駆り出され前線で多くの者が死んでゆく。
この頃生まれたジャズがブルースへ変化し、もともとの黒人音楽に白人が混ざりあいロックへとつながってゆく。このあたりは映画「エルビス」でも表現されていた。
第5章「フォーク」では、アナキストの労働運動や市民革命、産業革命などを経ていよいよパンクへと進化する過程が示される。
1929年の世界大恐慌の原因は、第一次世界大戦でヨーロッパの経済が回復し、アメリカからの輸入を減らしたのに、アメリカは生産量の調整をしないため、一気に失業者が増え、その数が1,000万人になる。過剰生産による売れ残り現象が恐慌の原因である。
恐慌の原因は資本主義社会における合理化のための人員整理による窮乏化法則
音楽の面でいうと、このあたりから自分でも記憶にあるロックの話題に突入する。労働者階級の音楽は、アメリカの黒人奴隷の音楽と合流し、イギリスで音楽を資本に組み入れる戦略が練られてゆく。ビートルズがエド・サリバン・ショーに出演し世界を席巻するが、メディアと資本が混ざり合うことで、労働者の音楽が中産階級へとシフトする。
ベトナム戦争を受けてフラワームーブメントやヒッピームーブメントにより、音楽が都市から郊外に向かう頃、黒人から派生した音楽の中心が白人へと移り、労働者から中産階級に変化した先にパンクロックが生まれるのだ。
ではパンクとはいったいなにか?
パンクの象徴とも言えるセックス・ピストルズは、アートスクール出身のバナード・ローズとマルコム・マクラーレンがジョン・ロットン(ジョニー・ライドン)をオーディションしたことで1975年にデビューする。彼らはアンチクライスト、アナキストを宣言し、反君主制などを訴えたことでテレビ出演を禁止され、右翼による弾圧などを受ける。
ときは1970年代。英国病と言われる行き詰まりの社会は、第4次中東戦争の影響でオイルショックやインフレによる失業であえいでいた。そこの登場したのがサッチャーで、彼女は労働者階級へさらなる圧力をかけ、新自由主義経済へと大きく転換させてしまう。このあたりのことは、メリル・ストリープが主演した映画にも描かれる。
少し横道に逸れるが、植民地政策も新自由主義も何もかも中世以降のイギリスが諸悪の根源であることは明らかだ。イスラエルの問題も然り。もっと踏み込むと、アングロサクソン的な文化が、地球上の全てを崩壊させ、何度も繰り返される戦争でスラブ系民族へも悪影響を及ぼしてしまった。直近だと、冷戦構造の崩壊でいよいよ地球は最悪の方向へとかじを切る。その諸悪がイギリスに集中している。
つづく・・・
★
★