Chime(チャイム) 黒沢清監督
「Chime」
先ごろ柴咲コウさんの演技が際立った「蛇の道」の黒沢清監督を、濱口竜介監督の「悪は存在しない」を鑑賞した菊川のStrangerで鑑賞。カフェなども充実して素晴らしいミニシアター。平日夜の会は満席の盛況だった。外国人の方もいた。
タイトルの「チャイム」が効いている。”音”こそこの映画のテーマ
「関心領域」もそうだが、この映画もまた画面に映されているシーンの外にもっと恐ろしいことが起きていることを想像させる。映画の中でも恐ろしいシーンはあるが、本当の恐怖が映画の外にある。その恐怖をここで説明することは難しい。
もともと配信プラットフォーム形式で販売のみの映画を、劇場公開したものらしい。新しいスタイルだ。
驚くようなシーンが静かなドラマと反比例して次々に繰り出されるのだが、最も注目すべきは田畑智子さん演じる主人公の妻。彼女の行為と彼女がかもしだす”音”の恐怖が映画全体に行き渡るように思える。映画のわずかなシーンしか出てこないのだが、彼女の印象が強烈に残る。
料理教室を恐怖の空間に変え、日常の家族や人間関係を徹底的に冷徹に描き、その先のこの社会がもつあまりにも利己的で傲慢な人間が描かれてゆく。黒沢清監督作品に見えてくる「スパイの妻」や「トウキョウソナタ」などに共通するみせかけの家族か上滑りな関係などに楔を打つような作品だ。「蛇の道」にも共通するテーマがなぞられる。
恐怖は自分の内にあって、外から攻撃を仕掛けてくるのだ。
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