戦時から目覚めよ② 戦時共産主義を!
- 戦時から目覚めよ 未来なき今、何をなすべきか (NHK出版新書)
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第5章 ほかの国が果たすべき役割
この中でジジェクは「黙認や中立は、大人が子供が虐待しているのを”中立”を理由に放置するのと同じだ」と示す。過去の歴史に照らしても「中立」は植民地主義の肯定だ。
ジジェクはここで、ウィキリークスのジュリアン・アサンジに一定の評価を与え、彼らが暴露した内容に「公に敵同士でも、実は裏で繋がっている」ことなどが明らかにされることを歓迎している。報道されるプーチンの言動は時として掴みどころがないのは、彼がナワリヌイを粛清した(と噂される)ことなどに象徴される。
ところで、現代ロシアにはレーニンの影すら見かけないらしい。ソビエト連邦前の共産主義国家の面影はすっかり消え去った。ロシアがウクライナに何を求めているかというと、「ウクライナの非共産化」で、これは中国も同じ考えだ。かつての共産圏が共産主義を警戒する社会に変化したのだ。
NATOがウクライナの加盟に慎重なのはこれである。仮にウクライナがロシアに勝ったとしても、ウクライナを受け入れたNATOはこのあと自滅するほどの苦労を背負わされることは明らかだ。
第9章 倫理観の衰退を示す紛れもない兆候
ジジェクはこれらの趨勢に倫理観を照らして説明する。
ロシアのドグマティズム(独断主義)、イスラエルのアラブ原理主義が広まる反対側で、寛容を標榜する西側の新自由主義社会は、寛容を保証するための厳しい規制を設けて寛容さを反転させてしまっている。つまり偏りがその反対側にもたれる矛盾の背景に倫理観の欠如があるのではないかと指摘する。
それは東側の国家が強権発動しているように見えて、実は西側諸国が堕落しているからだいい、この議論の結論として「戦時共産主義」を主張し、国家間の対立をやめて、生態系崩壊を防ぐだめに団結するべきではないかと主張する。刺激的な議論だ。
つづく・・・
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