ゴンドラ ファイト・ヘルマー監督、"That Makes Me Smart"(賢くなる)
「ゴンドラ」
実は去年、日比谷をとおりがかったとき、この映画の監督と主演を演じた女優に出くわしている。お二人が気軽にファンと交流しているところを覚えていた。
そしてその映画が上映されているのを知らず、あわてて見に行くことにした。
セリフが全くない。しかしサイレント映画とは違う。後半になると音の効果が最大限に生かされる。そして心を鷲づかみにされるような感動が押し寄せる。
場所はジョージア。この村に流れてきた若い女性がゴンドラの乗務員に採用される。そしてもうひとりの女性乗務員(日比谷でお見かけしたニニ・ソセリアさん)と次第に親しくなって、行き交うゴンドラで様々なやりとりが生まれる。これが想像を絶するシーンが次々と続き笑いを誘う。
反面、乗務員として働く彼女たちが抑圧された存在であることが示される。その抑圧の反動で、最後に彼女たちは村人の協力を得てクライマックスへと向かってゆくのだ。
なんという感動だろう。
この映画が教えてくれることは「シンプルであれ」ということではなか。世の中が複雑化する中で、この映画の女性ふたりは、セリフなどなくても惹かれ合う。ふたりがゴンドラの上に寝そべって空を見上げるシーンは胸が熱くなった。
淀川長治先生はかつて「映画は心で見るもの」と言われた。この映画はまさに頭ではなく心で見る映画。映像の巧みな美しさだけでなく、ストーリー展開の見事さも素晴らしい。心に残る素晴らしい映画だった。見てよかった。
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カナダの作家コリー・ドクトロウ氏の「騙されたお前がバカなだけだ」に向かう米国社会について詳しく書いている。「不公正で欺瞞的な」労働条件や経済取り引き、あるいは医療などについて深堀りしている。漠然と生活しているとどんどん騙されてゆく。
◆Pluralistic: “That Makes Me Smart” (04 Dec 2024) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
