カモのネギには毒がある9 大学の存在意義

第9巻、不知火大学の野球部を通じて、大学のおぞましい実態に迫る。


カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義 9 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
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基本的にこのドラマは行動経済学を軸にしている。なので、過去の学説が縦横無尽に入り乱れる。そしてここでも過去に何度か紹介された「認知バイアス」が使われる。罰金制度に反発した野球部の生徒が勝てそうもない大学相手に戦うはめになるのだが、加茂教授は、


クラスター錯覚


について説明し、生徒の思い込みを除去して強豪大学相手に勝利する。すっかり加茂にプライドを傷つけられた野球部の監督は、心理学が専門の大学理事長の命令で動いていたことを告白する。この理事長の口癖は、


人間はね「みんなやってる、これが普通だ」って言われれば人殺しだってやる生き物だ


と言い、すべてはカネで判断する。総資産回転率の低い大学経営を、自己の利益のためにキャンパス移転計画などを推進しようとする。ここで加茂教授は、アルバート・バンディーラ教授の、「ボボ人形実験」や、アダム・ガリンスキー教授の「権威実験(命令した経験とされた経験の対比)」などを解説して、この理事長が罰金システムなどを使って、学生を権威に従順で思考停止状態にし、企業受けの都合のいい学生を作る狙いを暴露してゆく。


権威者は他人に厳しく、自分のズルには甘い


という傾向を暴き出す。とても興味深かったのは、権力者に報酬や人事権などの絶対権限を与えた場合と、作業権限だけを付与した場合で、組織は大きく変化するという。ここは大いに学びがあった。


原作者の夏原武さんが、大学の「存在意義」を問い直せ、というエッセイをいつものように紹介している。


人口減少下で、私大の数は増え、経営が悪化状態にある大学は、いまや中間搾取業者に蝕まれる場となってしまったらしい。旅行や部活、教科書に至るまで、すべて利益がキックバックされる仕組みの「癒着」構造に侵食されているという。


本来対等であるべき教授会と理事会が、経営を司る理事会に牛耳られてしまったという。そんな中で、日比野克彦氏が学長を務める芸大が楽器を売却したというショッキングな事件も、大学が利益至上主義になってしまったことの証左だという。


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