ビートルズ ‘64 デヴィッド・テデスキ監督
マーティン・スコセッシがプロデュースしたドキュメンタリー映画。ディスニープラスで配信されている。
タイトルの「’64」
に重要な意味がある。日本人にとっては東京オリンピックが開催された年として記憶に刻まれているが、アメリカにとっては前年11月にダラスでケネディが暗殺されている。その翌年、1964年2月にビートルズがアメリカに上陸する。そのときの映像を軸に、ポールとリンゴや、生前のジョンとジョージらが当時を振り返る。画期的な作品。映像も美しい。
1962年にデビューしたビートルズは、翌年発売した「プリーズ・プリーズ・ミー」がメロディ・メーカー誌で1位を獲得するが、この頃まだアメリカでは知られておらず、64年1月に発売された「抱きしめたい」がアメリカで初めてチャート1位を獲得してから彼らの快進撃が始まり、その勢いで2月にアメリカに渡った。
彼らが滞在したたった3週間で、彼らは世界を変える。
2回に亘る「エド・サリヴァン・ショー」は衝撃で、1回目の出演がアメリカのテレビ史上最高の視聴率を獲得したらしい。このあと4月には彼らの楽曲がチャートの5位までを独占する。
いくつか注目すべき点があるが、最も印象的だったのは、彼らが黒人ミュージシャンにリスペクトされた点だ。当時黒人のミュージックシーンは、ステージのチャック・ベリーに熱狂しながら、まだまだ黒人が市民権を獲得する前のアメリカ社会。そんなとき、ビートルズがアメリカの黒人ミュージシャンの曲をリメイクしたことで、アメリカの黒人にも人気が広がったようだ。もちろん当時まだ子供のようだった彼らに人種や偏見などの意識は見受けられない。行く先々で大勢のファンに囲まれてもみくちゃにされながらも、それを楽しむ彼らの映像が残っている。
ケネディ暗殺、ベトナム戦争、キング牧師の暗殺など、1964年前後のアメリカを背景に、ビートルズのメンバーが楽しそうに旅をしている姿を記録する貴重な映像だ。
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