資本主義と民主主義の終焉① 水野和夫/山口二郎著


資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)
資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)
祥伝社


水野和夫先生の「世界経済史講義」を購読したことが、2019年に出版された本書を読むきっかけとなる。政治学者の山口二郎教授と書簡のやりとりによって、平成という時代を政治経済面から振り返るという内容だ。当時まだ第二次安倍政権だったこともあり、閉そく感に満ちた時代分析となっている。いまあらためて読み直す価値のある本だった。山口二郎氏はこの本を「次なる時代を読む手がかりにしたい」と書いている。(第八章までで構成されている。)


第一章 新時代への期待 1989-1992
ふたつの崩壊」というサブタイトルの意味は、バブルとベルリンの壁を意味する。しかし「世界経済史講義」にもあるとおり、我々がバブル崩壊に気づくのに3年かかることになる。狂騒とはそういうもののようだ。


水野先生は、バブルの発生は仕組まれたものであるとしている。1982年国鉄民営化など行政改革による規制緩和から始まり、1985年プラザ合意を経て円高に誘導されて急激に低金利による内需拡大でバブルが発生したとし、このバブルは冷戦下アメリカの軍拡を金融面で日本が支援することを目的としていたという。


2018年、レーガン中曽根に利下げ圧力をかけたことが公文書として公表されるが、ベルリンの壁が崩壊し冷戦が終わることで、今度は日本の急成長をアメリカが警戒したことが明かされている。1990年3月、外圧を受けた日本は「総量規制」という融資規制が行われ、一気に不動産と株価のバブルがはじけてゆく。


山口氏はこの時代の政治を振り返り、「恒産なくして恒心なし」という孟子の言葉を印象して、骨抜きにされる前、日本がまだ経済的に豊かだった時代は、政治家に良識があったという。


第二章 危機感漂う世紀末 1993-1999
相次ぐ企業破綻から金融危機へ


ここでおふたりが強く批判しているのは、1995年経団連が公表した「新時代の日本的経営」だ。その前、1993年に細川内閣に政権交代があり、その2年後、村山内閣の時代に経団連(当時の会長は奥田碩)がこの報告書を公表したことが雇用破壊の元凶であり、日本経済史の汚点だと断言している。


「革新」とは古い体制を新しくするもので、「改革」とは既存の悪い部分を良くする、という考え方で言えば、村山政権になり社会党が消え、ここから「革新」という言葉は消えた。そしてこの悪の報告書をもって、企業は社員の面倒を見ないことを断言したと言える。労働者は企業コストの調整弁とされ、これを受けて新日鉄が戦後初めてとなる大規模なリストラを行い、ソニーやトヨタがこれを追随した。


ちなみに1995年は山一證券が廃業した年でもある。



つづく・・・


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