阿部芙蓉美 Live at 能楽堂「緑光憩音」
◆68kg "Attentat terroriste"(テロ攻撃) - #ダリチョコ の映画とグルメ
去年の猪居亜美さんのライブに続き、自分にとっては新しいジャンルのアーチストとの接近。
ずっと憧れだった阿部芙蓉美さんのライブを初めて目の当たりにした。場所は表参道の墓能楽堂、プラダのビルの斜め前。午後2時頃待ち合わせして、入場時間の少し前に到着。座席はすべて座布団が用意され、場所によっては座りにくいだろう。
キーボードとドラムの方を引き連れ、定時の午後4時に阿部芙蓉美さんが登場。深々と二方向に頭を下げ長い髪をかき乱す。そして時間をかえてゆっくりと、そして時々独り言をつぶやきながらチューニング。そのまま楽曲に入るかと思いきや、いちど仕切り直しして再スタート。
とにかく歌詞が素晴らしい。
オーガンジーのドレスで とりあえず気分上げよう
クタっとよれたスニーカーの機動力 なめるなよ
「オーガンジー」
これまで接してきたあらゆる楽曲とも違う、新しい響き。そして言葉を丁寧に空気に紛れるように歌う阿部芙蓉美さんの声が能楽堂に響く。やわらかいテンポの曲を様々なアレンジで時間を忘れさせる。前半のクライマックスは「ごみ溜めのバラード」だろうか。ギターのコード展開で響く強い弦の音が彼女の声と混ざり合う。
美しく聡明であれ クソみたいなこの場所で
今夜君を本気で抱くよ ほかのことはもうなにひとつ しないよ
チェロの林田順平さんが加わって、より音に厚みが加わる。彼の奇跡的なプレイにもあっとうされる。途中でわずかなMCをはさんで、静かで厳かな時間が続く。しかし阿部芙蓉美さんは観客にリラックスすることを求める。最後の曲、新曲の「ウー・ルー」では、観客とともにメロディを共有する。
そう、彼女はきっと自分のためにこれらの楽曲を歌っている。そして我々は、この空間で彼女が自らのために歌っている空気を共有することになる。それほどまでに内向きな世界。もし音楽になにかの可能性があるとしたら、それはたまたま接した第三者の好奇心を掻き立てることだけだ。フェス系の大勢のひとが集まるライブにも意味はあるかもしれないが、阿部芙蓉美さんはあの世界とは真逆の美しい孤高の世界にいる。素晴らしいことだ。
- Super Legend
- ABEFUYUMI RECORD
- Digital Music Purchase
何度も繰り返し聞いた、昨年リリースされた最新アルバム「Super Legend」からのタイトル曲。
狂い咲いて死ぬ 暗闇の世界で ほんの少し手前を照らしてくれる光
あなたはわたしのSuper Legend
深読みかもしれないが、このアルバムにはコロナを経て、世界が対立関係にある世の中を俯瞰から見下ろすような神々しさがある。
ここは今日も最前線 ミサイルの雨
気をつけて本能でジャンプ 致命傷は避けなきゃ
だって私たちこれからでしょう
阿部芙蓉美さんの楽曲は空気を伝えるもののような気がする。伝わる空気にささやかな毒があって、われわれは無自覚にその空気を吸い込んでしまう。まるでコロナのように。しかしここで生まれた免疫は、彼女の楽曲を受け入れる姿勢を正すものだ。彼女がさかんにリラックスを求めるのとは裏腹に、客席は緊張の中、彼女のオーラに揺られて吸い寄せられてゆく。
日程:2025年2月22日(土)
会場:銕仙会能楽研究所2F本舞台
出演:阿部芙蓉美(Vo,G)東川亜希子(Key,cho)菅沼雄太(Ds,cho)
Guest:林田順平(Cello)
阿部芙蓉美
空間に溶け込む音
耳を澄まして聴きたい
19:30からの回はまだ当日券あります pic.twitter.com/XVCIHwkK7H— タカハシコーキ (@kokicik) February 22, 2025
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