シンボルエコノミー ① 水野和夫著

シンボルエコノミー 日本経済を侵食する幻想 (祥伝社新書)
シンボルエコノミー 日本経済を侵食する幻想 (祥伝社新書)
祥伝社
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昨年12月に出版された水野和夫先生の著書。「日本経済を侵食する幻想」というサブタイトルが意味深だ。鈴木忠志さん率いる演劇集団の「果てこん」を冒頭で紹介し、リアルとシンボルの違いをわかりやすく示す。



第1章 幻想のインフレ時代


リアル  L(労働)K(資本) GDP

シンボル ROE(自己資本比率)を上げK(資本)を増殖させる


多くの示唆がある著書だが、水野先生の主張は「金融政策で成長はできない」という前提にたち、日本は世界に先駆けて「定常状態」に至ったと言っている。黒田前日銀総裁と安倍元総理が進めた「量的緩和」はまるで効果を示さず、むしろ実質賃金の低下をもたらした。(1994年比26%ダウン)日銀は理論として成り立たない金融政策を呪術化しているとし、スキデルスキーの「経済学者の仮説は宗教上の信念と似ている」を引用したうえで、「危険なものは思想(宗教)」だとほのめかす。


第2章 経済成長という病


水野先生は「経済学の目的は自由の獲得」であるという。そして実質賃金の低下は働く人々の自由度を低下させていると嘆く。近代の行動原理「より遠く、より速く、より合理的に」という考えは、成長の「収斂仮設」によって「定常状態」に移行し、成長という幻想と病にとらわれ続けることの危険さを説いている。


「人類は自由を求めてきた結果、不自由な社会を招来してしまった」という。矛盾は立場の弱い人にしわ寄せされるものなのだ。


第3章 リアルエコノミー vs シンボルエコノミー


ここからは、アメリカとの関係について論述するのだが、日米は利益の裏表を示すもので、日本の「ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ」がアメリカのシンボルエコノミーを支えているとする。円安シフトは日本の低所得者層を苦しめる結果となり、前章で示したとおり、量的緩和は株価を上げて富裕層と海外の資本家を豊かにしただけだ。


水野和夫先生と島田裕巳氏の共著「世界経済史講義」でも示していた「長い16世紀」とおなじ過剰生産がゼロ成長の日本を羽交い絞めにし、食品ロスや空き家問題など「過剰供給体質」を作ってしまった。ケインズの言葉は示唆に富み「貨幣愛は犯罪的で病的な性癖とみられるだろう」とは、経済活動は芸術と科学の僕(しもべ)の地位にあるとする。また、ミルの「経済学原理」から停止状態を以下のようにまとめている。


1、労働者階級の生活水準が高い

2、富の公平な分配制度

3、すべての人間が感動(美)を探求できる

ここでいう3の部分は極めて重要だ。


つづく・・・


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