シンシン/SING SING、"What the big deal is"(デ・ニーロ)
4月日比谷で「シンシン/SING SING」を鑑賞。A24映画。ホラーが多い印象のA24だが、この映画は違う。ニューヨークにあるシンシン刑務所の映画。実話である。
まず、表現が秀逸。映画が始まり、ほんの僅かな時間で彼ら”俳優”が刑務所の舞台演劇にプライドをもっていることがわかる。しかし彼らはどこの刑務所でも見かけるように番号(Gとかアイとかの暗号)で並ばされて独房に向かう。この明暗。
なるほど、この映画はある意味で”明暗”を示すものなのかもしれない。この冒頭の僅かなシーンでそのことを予想すると、こみ上げてくるものがある。正直いって、ずっとウルウルしっぱなしの映画だった。
この映画はコメディではない。しかし、A24がおくる観客に緊張感を強いる映画とも違う。リアルな刑務所生活に潜入し、カメラはかれらの表情に迫る。とにかくどの俳優もうまい。リアルな演技が見事すぎて、彼らの演技の隙間から我々が無意識に感じ取る何かがこの映画の伝えようするものなのか。
”明暗”のひとつは、主人公ディバインG(コールマン・ドミンゴがアカデミー賞にノミネート)の親友マイク・マイクの死、そしてこのメンバーに新たに加わったディバイン・アイとの確執。ディバインGをめぐる運命の逆転についてここで詳しく書くことは控えよう。
時折挿入される本物の映像と映画の映像が重なり合うとき、この感動は頂点に至る。もちろん彼らは罪を犯して刑務所に服役する者たちではあるが、アメリカの受刑者の8割がアフリカ系で、全員が裁判による判決を経ているわけではないことを知ると、この映画に対する価値は大きく変わるのではないか。しかし、映画の中で差別だとか格差だとか人種のことは一切触れられていない。だからこそ・・・、という映画だと思う。
素晴らしい映画だった。
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Netflix映画「セロデイ」で話題となったロバート・デ・ニーロの娘がトランスジェンダーであることを明かした(CNN)。彼女を支持した父親のデ・ニーロが「アーロンを息子として愛し、支えてきました。そして今は、アイリンを娘として愛し、支えています。何がそんなに大げさなのか分かりません」と声明を出している。娘を理解するよき父親。
ジェンダーギャップ指数118位と年々順位を下げる日本人は、この記事をどう読むだろか。
◆ロバート・デ・ニーロは、娘のアイリンがトランスジェンダーであることをカミングアウトしたことを支持。「何がそんなに大したことなのか分からない」
