静けさが問いかける──アフガンの痛みと『フォーチュンクッキー』

dalichoko(ダリチョコ)


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フォーチュンクッキー(KINENOTE)


このレビューが公開される頃には、もしかするとすでに劇場での上映が終わっているかもしれない。


だがこの作品は、じわじわと人気が広がるタイプの映画だと思う。もし、これから鑑賞しようとしている方がいれば、ぜひ予備知識としてこの文章を読んでから観てほしい。というのも、この映画は“背景を知っているかどうか”で、まったく印象が変わる作品だからだ。


町山智浩『フォーチュンクッキー』を語る | miyearnZZ Labo



映画の鍵となるのは、いくつかの静かなサインだ。


たとえば冒頭、主人公ドニヤの無表情な顔。彼女は最後まで笑わない。その「笑えなさ」は、アフガニスタンという国の現状と密接に結びついている。ここが最も重要な視点だ。そしてもう一つの象徴、「鹿」の存在。


フォーチュンクッキーに託された“夢のような言葉”が、この作品ではどこか空虚に響く。


一見、ただクッキー工場で働く女性の日常を淡々と描いているだけのように見えるが、その日常の背後に、複雑な構造が潜んでいる。


スクリーンサイズは昔のテレビのようなほぼ真四角。無機質な工場、アパート、食堂……。そこに登場するのは、やさしい人とそうでない人、どちらかに分かれるような人々。睡眠薬を求めてカウンセラーのもとを訪ねるシーンは、彼女の孤独の深さを象徴している。


ある日、彼女は旅に出る。フォーチュンクッキーに自分の電話番号を書いたところ、返事が届いたからだ。旅の途中で出会う整備士を演じるのが、人気テレビシリーズで注目されるジェレミー・アレン・ホワイト。やがて彼女の旅は、あの「鹿」のエピソードへと静かに収束していく。


この展開に、大きな感情の起伏はない。けれど、事前に背景を理解して観ると、ドニヤの沈黙や目の奥の虚ろさが、胸にぐっと迫ってくる。


原題『Fremont』は、カリフォルニアの小さな町の名前だ。この地名が持つ象徴性──移民、孤独、境界──それらがこの映画の静かな骨格を形づくっている。


監督はイラン出身でロンドン育ちのババク・ジャラリ。アフガニスタンと同じく、イランもまたイスラム原理主義の抑圧のもとにあり、多くの芸術家や文化人が国外へ追われている。この映画には、彼らの痛みが静かに刻み込まれている。


映画そのものは多くを語らない。だからこそ、観る者に問う──「あなたは、知ろうとするか?」と。


極めて静かで、極めて強い映画だ。






Q & A with Babak Jalali, director and co-writer of the film: Fremont, releasing in cinemas on May 2.


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