ストレンジ・ダーリン 「固定観念をぶっ壊す」
さすがにこの記事がアップされる頃には、映画の話題もピークを過ぎていると思いますので、ややネタバレ気味にコメントしたいと思います。――これは、かなり“ヤバい”映画です。
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ストレンジ・ダーリン(KINENOTE)
SNSなどで「テクニックだけで見せる映画」などと評している人もいますが、私はそうは思いません。
過去の有名などんでん返し映画──たとえば『ユージュアル・サスペクツ』や『シックス・センス』、あるいは『セブン』などは、物語を進める中心人物の視点がトリックになっていました。この『ストレンジ・ダーリン』も、視点がトリックの鍵となります。違うのは、本作が追う者と追われる者、二つの視点から描かれることです。
冒頭がとても巧妙。車の助手席から、女性が運転する男に向かって「あなたはシリアルキラーなの?」と問いかけます。次に、男がベッドで誰かを押しつぶそうとしている場面、そして赤い服を着た女性が森を逃げるスローモーションのシーン。彼女は耳にケガを負い、髪は金髪。観客は、この映像から物語の輪郭を自然と組み立て始めることになります。
しかし、これはすべて“罠”です。
「本作は35ミリフィルムで撮影された」「2018年~2020年にかけてアメリカ西部で起きた実在の連続殺人事件の再現」など、オープニングで掲げられる説明も、実はフェイクです。作り手は最初から「これはフェイクだ」と宣言し、我々の思い込みを試してくる。
物語は6つの章に分かれていて、その順番を意図的にシャッフルすることで、スリルと混乱を演出しています。これを時系列順に並べたら、おそらく凡庸なサイコスリラーになってしまったことでしょう。
物語が整理されるにつれ見えてくるのは、社会に蔓延する「男性=加害者/女性=被害者」という図式の危うさです。ある場面では、手錠で拘束された女性を救出しようとする女性警官と、現場検証を優先しようとする男性警官が激しく対立します。その顛末はぜひ映画で確認していただきたいですが、この作品は、私たちが無意識に抱いているあらゆる先入観や固定観念を、容赦なく切り裂いてくる。
見終えてしばらく経つと、じわじわと記憶の底からあのシーン、このシーンが蘇ってくる。これはそういう映画です。
町山智浩『ストレンジ・ダーリン』を語る | miyearnZZ Labo
映画評論家 町山智浩が聞く!『ストレンジ・ダーリン』JT・モルナー監督インタビュー
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