五輪書 「形にとらわれぬ勝利の哲学」

dalichoko(ダリチョコ)
五輪書 (講談社学術文庫)
五輪書 (講談社学術文庫)
講談社
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◆火之巻


小手先の小技では勝負にならない。ここでは技の根源を押さえ、敵に対峙するための本質が語られます。


「枕をおさゆる(押さえる)」とは、強く押さえ込もうとする意識がかえって隙を生むことを指します。また「けいきを知る」とは、智力を磨けば相手の動きが自然と見えてくるということ。そして「うつらかす」とは、あえてゆったりと構えることで相手の気迫を削ぐ術です。表面的な力ではなく、心と技の根幹で相手を制する姿勢が示されています。


◆風之巻


「兵法の道は正しくまっすぐなもの」。ここでも武蔵は力でねじ伏せることを戒めます。周囲に動揺してはならず、また「太刀の構えを用いる事」についても、定まった形を作ることは勝負においてありえないと断言します。


「有構無構」――構えがあっても構えがない境地。さらに「はやきを用いる事」、すなわち焦る心を捨てよ、と説きます。大局に目を据え、細部に囚われぬことが肝要だというのです。


◆空之巻


最後の「空(くう)」は、形のないものを意味します。武蔵は「心と意」という二つの心を磨き、「観と見」という二つの眼を鍛えよと説きます。「正しい空」とは、自分だけの正しさに閉じこもらず、多様な見方を受け入れつつ、悟りに近づくことだといいます。


結びには「兵法三十五箇条」と「独行道」が添えられます。「心持」とは、“心を水のようにして、折々の事に応ずる心地”。これは水之巻で繰り返された教えに通じています。


◆読後の感想と影響


宮本武蔵の生き方をそのまま現代に真似することはできません。彼はただ「勝つ」ことに己を捧げ、孤高の剣士として死の間際までその道を歩みました。けれども「五輪書」が放つ言葉は、単なる剣術書を超えて、人間の在り方そのものに突き刺さります。


ブルース・リーは「Be water, my friend(友よ、水になれ)」と語り、武蔵の「水之巻」に深い影響を受けたとされています。またビジネスの世界でも「五輪書」は戦略論として引用され、欧米の経営者や軍事戦略家たちもこの本を手に取ってきました。スティーブ・ジョブズが禅に傾倒していたように、武蔵の思想もまた、戦いや芸術、ビジネスを問わず多方面に波紋を広げています。


対立が絶えず、ギスギスした社会を生きる私たちにとって、「五輪書」の教えはなお示唆に富んでいます。勝利とは単に他者に勝つことではなく、己の欲や弱さを乗り越えること。形にとらわれず、心を水のように保ち、空のように広く構える。


――宮本武蔵が残した言葉は、400年の時を超えて今もなお、私たちの心に問いかけ続けています。



おしまい




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