Omnibus of dodos ― 絶滅と希望の赤い風船
10月1日まで、まだ少し展示が続くようですので、これはぜひ多くの方に見てほしい展示です。刺激的な作品が揃っています。
まずは、予備知識なしでこの可愛らしいキャラクターを見てまわるといいでしょう。鳥のようですが、飛んでいる絵はありません。その答えは後ほど紹介します。
「ドードー」と聞いてピンとこない方もいるかもしれませんが、実は「不思議の国のアリス」や「ファンタスティック・ビースト」、ゲームのキャラクターなどに登場する絶滅した鳥のことなのです。
私が特に心を惹かれたのは、風船を見上げるトードーの姿。かつてモーリシャス島に生息していたこの鳥は、外敵のいない環境に適応する中で飛ぶことをやめた「飛べない残念な鳥」だそうです。
この赤い風船は、バンクシーの作品「愛はごみ箱の中に」で裁断された「風船と少女」の手から離れた赤い風船を思い起こさせます。
平和な島で空を飛ぶことをやめたトードーですが、人間が住みつくことで絶滅の道をたどることになりました。なんと人間は愚かで残酷な生き物なのでしょう。同じ人間として、申し訳ない気持ちが込み上げます。
しかし、キム・サンウー作品のトードーは前向きです。空に憧れ、いつかまた飛べる日を夢見ているように感じられます。ユーミンの「ひこうき雲」や宮崎駿監督の「風立ちぬ」では、空への憧れは“死”を象徴します。しかし残念ながら、トードーを絶滅に追いやったのは、私たち人間なのです。
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