キネマ旬報ベストテン
やはり毎年これを読まないと、前の年は終わらないし新しい年が始まらない。ハリウッドのアカデミー賞より1回多いのとトロフィーが超重たい、という些末な話題もさることながら、伝統あるキネ旬のベストテンは一定の基準をなしていると思う。
このベストテンの特徴は、評論家と読者という視点の違いを比べるのも醍醐味といえる。市場に出回りにくい作品でも評論家が高く評価すれば後から鑑賞に値するし、読者選出ベストテンを追いかけるのも楽しい。
2020年の映画を一言でくくると韓国映画だと思う。
かねてからクオリティの高い韓国映画の強さを感じてきたが、やはり国策として映画をはじめとする文化に国家予算を投じる国だけある。しかし内容は必ずしも”右より”ではなく、この年に選出された多くの作品が韓国という国を自虐的に捉えた内容であることが重要だ。少なくとも日本映画にその姿勢はほとんどない。
評論家、読者ともに外国映画1位が『パラサイト 半地下の家族』であることは言うまでもなく、『はちどり』の評価も高い。評論家の1位と2位が韓国映画だった、というのはとても説得力がある。
あとは女性映画監督の活躍もまた嬉しい。
『はちどり』のキム・ボラ監督だけでなく、もう日本では大御所となった河瀬直美監督の『朝が来る』や、今年上映予定の西川美和監督の『すばらしき世界』など、必ずしも女性目線だけではない広い視野の作品に心を震わせる。
男ばかりの現場でもまれてきた黒澤明監督とともにした野上照代さんが特別賞を受賞されたのもまた嬉しい。『天気待ち』で野上さんの生い立ちと伊丹万作や黒澤明との交流で得られた当時のクオリティが高かった頃の日本映画をリアルに表現する著書にクスッと笑ってしまう愛らしさを交える表現が素晴らしかった。
コロナで映画館事情は必ずしも順調とは言えないが、第二次世界大戦後初めての難局で、映画がどれだけ人々の心に届いたかを問う年となった。ほかにもドキュメンタリー映画などでこれまで以上に見応えある作品が並んだことを喜ばしく思う。
(=^・^=)
★