ジュリーは沈黙したままで 「沈黙する少女の痛み」
若い優秀なテニス選手の少女が、惑いの中で生きる姿を描いた作品。
胸をぐいぐい締めつけられるような厳しい映画です。
この少女の沈黙を、私たちは大人としてどう受け止めるべきなのでしょう。
彼女のコーチが辞め、新しいコーチがつきますが、うまくいきません。
前のコーチの教え子だった先輩選手が自殺したことで、物語はさらに複雑になります。
学校やクラブ、親たちが彼女に問いかけても、ジュリーは一切答えません。
沈黙したままで・・・。
この沈黙をどう解釈すればいいのでしょう。
学校や職場、地域でも、自分の思いを言葉にできる人と、そうでない人がいます。
ジュリーにとって前コーチは、単なる指導者ではなく、心の支えそのものでした。
その信頼が突然失われたとき、彼女は内側から崩れていきます。
この映画のプロデューサーを務めたのは大坂なおみさん。
彼女もまた、精神的に深い痛みを抱えながら、トッププレーヤーとして戦ってきました。
大坂なおみさんは痛みを知る人です。
大きな期待を背負うほど、内なる苦しみを言葉にすることすら許されない世界に生きています。
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もしかすると、この映画は「選挙と鬱」で水道橋博士が苦しんだ姿ともつながっているのかもしれません。
苦しいときに「苦しい」と言える社会。
そのあたりまえの場所が、今、静かに消えつつあります。
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