DIGGER/ディガー 「観るものをもてあそぶ」
多重構造の映画です。
ですから、このブログで作品の内容についてあれこれ書くことは控えます。これが現実なのか、それとも未来のことなのか、明確にすることはできません。ただ、いろいろな方の話に聞き耳を立てていると、この映画には過去の名作の名場面が集約されているようです。
それは、イニャリトゥ監督がこれまでの作品でも試みてきたことです。この映画もまた、過去の映画へのオマージュによって構成されているということなのでしょう。
物語の中心にあるのは、石油王のお話です。
冒頭、よぼよぼの猫に添い寝するディガー。実在した石油王ロックフェラーをモデルにしているのでしょうか。傲慢で独裁的な主人公の言動にぐいぐいと引き込まれますが、トム・クルーズがここまで想像もつかない姿を見せるとは思いませんでした。
石油を掘りすぎた結果、アラスカの氷河に亀裂が入り、巨大な島のような氷の塊がヨーロッパを直撃。多くの人々が災害に見舞われるという、パニック映画のような展開です。
ところが、その中身はコメディ。キューブリックの『博士の異常な愛情』を思わせるような、ドタバタ劇が繰り広げられます。口をあんぐりと開けて見つめるしかない作品で、次から次へと想像を絶する展開が押し寄せ、見ているこちらまで疲労感を覚えます。
ほかの方のレビューを読むと、「資本主義の破壊」だとか「イニャリトゥの大論文」だとか、高く評価する声がある一方で、「退屈な映画」と評する方もいます。
わたくしは、そのどちらの評価も支持します。
なぜなら、この映画を見て何を感じ、そこから現実について何を考えるかは、人それぞれだからです。映画も含め、表現は常に自由であるべきだと思います。主人公の傲慢さも、映画の中で繰り広げられる荒唐無稽な出来事も、すべてが表現の自由の中にあります。
イニャリトゥ監督の過去の作品を振り返ると、こうした仕掛けの意味がぼんやりと見えてきます。彼は、いくつもの異なるモチーフを映画の中に配置し、最後にはそれらが結びつくような構造を築いてきました。
そう考えると、観客もまた、この映画を構成する一部分なのではないかと思えてきます。
キューブリックも、ベルイマンも、タルコフスキーも、フェリーニも。映画史に名を刻む巨匠たちの作品までもが、イニャリトゥ監督の手の内で転がされている。
そんな映画なのではないでしょうか。
あとは、ご覧になった皆さんのご意見に委ねます。ぜひコメント欄などで、皆さんの感想をお聞かせください。
(=^・^=)
【配信】ネタバレ注意!町山智浩とDr.マクガイヤーが『DIGGER/ディガー』について語る回
★

