カモのネギには毒がある 7 「日本農業 衰退の道」
ついに7巻まできた。
アルゼンチンのバラマキ政策が将来の日本に重なるという話題から、地方再生策をめぐる怪しげなコンサルタントと対決する話しの続き。
黒川という悪徳コンサルがかつて農家から土地を買収しようとしたが断られた。対する丹藤があっという間に農家の理解を得て驚かす。対する黒川案の複合施設は3ヶ月で売上を落とし、ゲリラ豪雨などもあって施設は壊滅的な被害を受ける。もともとあった立派な施設をリノベーションしようとしたが、すぐに飽きられたうえ、災害によって息の根を止められる、
対する丹藤案は、農家の皆さんの力を借りて再興したばかりでなく、農産物の輸送でドライバーが壊滅した施設で休憩したり食事したりすることで活性化する。丹藤案はナッジ理論に基づき、強制せずにいい方向へ行動変容をもたらす手法で利益をもたらす。
ここがすごく面白くて、①オランダの空港の男子小便器にハエのマークをつけただけで80%清掃費が削減 ②ロンドンのタバコポイ捨てが、吸い殻を投票箱に変えたらなくなった ③大病院の日勤と夜勤のサービス残業が、それぞれの制服の色を変えただけでほぼなくなった、というような事例は興味深い。
主人公の学生である三咲が最後に「何人の日本の政治家が”ヒト”を見て政治をしているんだろう」という問いかけは、ハコモノ行政とバラマキ政治で人々価値基準を”カネ”に意識付けしたことで、人の心理が空洞化した日本をうまく描いている。
原作の夏原武氏は、日本農政を痛烈に批判する。食料自給率が世界最低レベルになってしまい、農業従事者の高齢化も相まって絶望的な状態のこの国の実情は、耕作放棄、農家の収入不足、外圧による輸入増などで絶望的だそうだ。功罪はJAが農家を借金漬けにして搾取したことによる。今思えば「平成の米騒動」と言われた1993年、備蓄のない状況をとらえ真摯に取り組めば立て直しはできたはずだ。
次は、大学の実態に切り込むようだ。
体罰と学習効果の実験で、電気ショックを与え続けると無気力になるという実験により、人がどこまで残虐になれるかという心理を解く。統計のウソなども含めて、日本の大学進学率のウソを暴こうとするらしい。
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