地霊を訪ねる ③ 伝えたいこと

地霊を訪ねる ② もうひとつの日本近代史 - #ダリチョコ の映画とグルメ


地霊を訪ねる ――もうひとつの日本近代史 (単行本)
地霊を訪ねる ――もうひとつの日本近代史 (単行本)
筑摩書房


タイトルの「地霊」は、その土地の精霊や神を示すものだが、ここではその神を偉人たちに重ねているようだ。そして偉人たちの言葉を現代に重ねて、われわれにやんわりと””何か”を主張しようとしているように感じる。


高野山では空海について言及する過程で、かつて英国人が日本で捕虜とされたとき”Forgive not forget"と言ったことも記録している。


新居浜選鉱場では住友の歴史をして「人間が経済的な豊かさを求めながら大地を傷つけたあと、元の姿の戻そうとする努力が重ねられた象徴」とし、これは四方田犬彦先生の「モロッコ流謫」でも紹介された考え方に重なる。広瀬宰平が「確実を胸として浮利に走らない」という考えは、同じ資本主義にあっても、異質の思想と言えるのではないかい。(残念ながら、昨今の住友グループからこの思想は削除されたようだが・・・)


北の軍艦島といわれる松尾鉱山では原敬の座右の銘「宝積(ほうじゃく)」を紹介。「人に尽くして見返りを求めない 人を守りて己を守らず」。これをいまの日本の政治家はどう読むだろうか。松尾鉱山というと、東洋一といわれた硫黄鉱山の繁栄と衰退の象徴である。



久留米では、三池争議が生死を賭けた「総資本と総労働の対決」だったとしている。資本に丸呑みされた労働はもはや奴隷でしかない。いまがまさにそうだ。(先ごろ池袋でデモがあったようだが、スケールが違う。)



苫小牧では伊能忠敬の覚えを記す。「手のひらを返すように賛美から糾弾へ立場を変える世間の『正義』などアテにならない。」ネット社会に埋没する我々が自覚を求められるメッセージだろう。「正義」に色はないのだ。


小諸は佐久間象山の「省諐録(せいけんろく)」は「狭量な国枠主義者から命を奪われる」危険にさらされながら主張を曲げなかった偉人を高く評価する。


ほかにもここで紹介に至らない数々の事例や言葉を重ね、猪木武徳先生の知性の集大成とも思える著書に仕上がっている。言うまでもなく、猪木先生は歴史を紐解きながら現代の事象に照らして、同じ過ちを繰り返すことのないように諭しているのだと思う。


政治が一方へと極端に偏り、私利私欲のみを生業とする為政者が、過去の歴史においても究極の危険にさらされていることをこの本は全体の構成から読み取らせようとしているように思えてくる。そして何度も繰り返すのだが、資本主義という絶対的な格差を至らす構造の中で、我々はもはや逃げ場のない社会への追い詰められたのだと思う。


それは猪木先生の過去の著書からの流れからも読み取れるのではないだろうか。猪木先生の伝えたいこととは「資本主義は必ずしも民主的ではない」ということではなかろうか。


経済社会の学び方①  猪木武徳著 - 

デモクラシーの宿命① デモクラシーと市場の選択 

デモクラシーの宿命② 教育と学問が向かうところ

デモクラシーの宿命③ 文明から野蛮へ? 猪木武徳著 

まとまりのない本の紹介になってしまったが、著書自体には大きな価値がある。


おしまい


地霊を訪ねる ① 猪木武徳著 - #ダリチョコ の映画とグルメ


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