落穂(おちぼ)拾い
恥ずかしいことだが「落穂拾い」の意味を全く知らなかった。ジョージ秋山さんの「聖書」を読むまで。この記事にも同じことが書かれていて感銘を受ける。
30年以上前に卒業旅行で訪れたパリのオルセー美術館。真っ先に向かったのがミレーの「落穂(おちぼ)拾い」だった。3人の貧しい農婦が収穫後の畑にかがみこみ、麦の穂を集めている。与えられた生をただ生きることの清らかさが、心に深くしみ通る。今も最も好きな絵画だ。
▼だが当時、彼らが穂を拾う理由や背景には想像が及ばなかった。農場主は収穫する際、日々の糧に困る人のため刈り尽くさず穂を残しておく。そんな暗黙のルールが旧約聖書の時代からあったと現代のモノ拾う人を追った仏映画「落穂拾い」(2000年)で知った。ミレーが描いた農婦は、労働をしていたのでなかった。
▼空腹を満たすパンの材料を集めていたと気づき、軽いショックを受けた。春4月、日本では小麦が穂を出す季節になった。ここより寒冷なウクライナでもすくすく育っているのだろう。しかし、それらが無事に実っても、収穫は万全とはいかない。「欧州のパンかご」と呼ばれる地での紛争が世界に暗い影を落としている。
▼先週末、国連食糧農業機関(FAO)が公表した3月の世界の食料価格は2カ月続けて最高値を更新した。じわじわ忍び寄る食料危機。特に深刻な影響を受けそうなのが中東やアフリカ諸国の貧しい人々だ。こんな愚かな戦争のために誰も飢えさせてはならない。畑に落穂を残した先人の如く我々にも慈しみの知恵がいる。
2022年4月12日 日本経済新聞 春秋より
Russia-Ukraine war latest: Biden accuses Russia of genocide; Putin ally captured in Ukraine
The Guardianより
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