経済成長主義への訣別 ① 佐伯啓思著

経済成長主義への訣別 (新潮選書)
経済成長主義への訣別 (新潮選書)
新潮社


経済学者というよりすっかり思想家としての佐伯啓思先生が2017年に出された本をいまさら読んでみる。


さらば、資本主義 | dalichoko(ダリチョコ)


佐伯先生の著書をブログで紹介することはあまりないのだが、「アダム・スミスの誤算」や「ケインズの予言」 も読ませていただいた。


この著書は佐伯啓思先生の力作で、かねてからこの資本主義が矛盾に満ちて、いつかは形を変えるであろうことを予言的に書いている。「脱成長」を冷戦時代の共産主義などと重ねる風潮に抗い「必ずしも貧しくなる社会」ではないと断じている。


序章 人間復興の経済へ


この本が書かれた時期が、ちょうどアメリカでトランプが大統領になった時期ということもあって、ますますグローバル資本主義が機能不全を引き起こすのではないかという懸念を示している。そしてここでは資本主義を「負債を抱えて未来に投棄し収益を得る」と定義し、未来の収益という成長信仰は”破局(リスク)”を全く想定していない。むしろ破局主義者の方が持続的安定を可能とする、と述べている。賢明な破局主義こそ、人間中心主義であると説く。


第一章 スモール・イズ・ビューティフルを読み返す


スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)
スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)
講談社


ここではシューマッハーの「スモール イズ ビューティフル (人間復興の経済)」を読み解こうとする。人間はもともと小さい存在で、巨大さはいずれ行き詰まる、という説のようだ。地域で可能な限り持続可能な循環社会を作るべきで、都市化を完全否定している。都市化に対する批判は養老孟司先生や宮崎駿監督が再三唱えるもので、小さな社会は落語会で春風亭小朝師匠が積極的に発言されている。


数値で示すGDPなどは、その中身の良し悪しを測れない。不健全(例えばバブル)で破壊的な成長もあり、その裏では地球環境が滅ぼされている。斎藤幸平先生の言う「人新世の資本論」やラワーズ教授の「ドーナツ経済」と同じだ。人間は小さな理解の届く集団の中でこそ人間でありうるという。会社組織や地域社会などにも同じことが言えそうだ。


余談だが、年に数回の同窓会も、大勢集まろうとすると欠席者が増える。例えは違うかもしれないが、同じ原理なのではないだろうか。


人間の本質は経済が豊かになっても変わらない。近代的自由主義は「個人」にフォーカスするもので、実はこれがひとつの価値に個人を追い込もうとする仕組みになっている。個人主義とはアングロサクソン系の考え方で、日本などは公共や家族を重んじるスラブ系の考えに馴染まない。エマニュエル・トッド教授が言われていたことに符号してくる。


問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界 (朝日新書)
問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界 (朝日新書)
朝日新聞出版


つづく・・・



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