フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン グレッグ・バーランティ監督
公開週の日曜日、日本橋で鑑賞。客席は賑やかで朝なのに8割の入りだっただろうか。
この映画の予告編を見て思い出すのは、言うまでもなく「カプリコン1」だ。いま何もかもがフェイクの時代にあって、このドラマを政治的に映すかラブコメで広めるかは議論の余地があるものの、「カプリコン1」はこの映画を先取りしていたと解釈できる。
しかし映画はあの映画の面影の微塵もなく、スカーレット・ヨハンソンとチャニング・テイタム(当初はクリス・エヴァンスが予定していたらしい)のラブストーリーに徹している。
少しネタバレになるが、プロデューサーとしてスカーレット・ヨハンソンがこの役にこだわったのは、主人公が詐欺師だという点なのではないか。子役の時代からハリウッドで活躍する彼女は、多くの大監督やプロデューサーと渡り合い、莫大な資本を投下するフェイクな世界を生きてきた。その彼女が、アメリカ最大のフェイクに挑戦する物語とも読める。
宇宙、詐欺師、陰謀論は映画で最も注目されるカテゴリーだ。911も先ごろの大統領選中に起きた銃撃も何もかもがフェイクかもしれない、と想像すると、スペクタクルが最も市民を揺動する道具として使い勝手がいい。
その昔作られた「合衆国最後の日」という、核兵器を人質にして国家を脅迫する映画を見直したが、先ごろ鑑賞した「HOW TO BLOW UP」も同じテロの映画として見応えのある内容だ。これらの政治的メッセージの強い映画とは異質ではあるものの、このラブストーリーの中にも一定の見えない作りての思いが隠されているように感じた。
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