パンクの系譜学 ① 川上幸之介著
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たまたま図書館に置いてあった本をパラパラめくったら面白そうなので借りることにした。
かなり分厚い本で、単なる音楽本ではない。
まずはじめに、著者はこの本でパンクのもつ可能性について言及する。特にアナキズムについて誤解があることをこの本は改めようとしている。「フランケンシュタイン」の原作者シェリーの父ウィリアム・ゴドウィンこそアナキズムの先駆者だ。
アナキズムの父プルードン曰く
アナキズムは秩序で、政府は内乱
と言っている。そもそもアナキズムを「無政府主義」と日本語に訳してしまった時点で誤解が多いのだが、パンクに至る系譜を語るうえで、このアナキズムの誤解を解くことがこの本の側面的な役割でもあるようだ。
第2章「コミュニズム 共産主義」と第3章「アナキズム」のあたりで著者は丁寧にこのことを解説している。
マルクスは、資本主義の発展で人々が「もの」のように扱われるようになり、労働が生きる気力を失わせることを「疎外」という構造として表現した。労働者は団結して革命が起きるであろうことも予測した。これはギー・ドゥボールの「スペクタクルの社会」へ波及する。しかしアナキズムはマルクスの考えとも距離を置く。
プルードンは所有という概念を否定し「所有は盗みだ」と断じた。財産とは本来、人類、あるいは地球規模で生き物共通の富であり、資本に所有されることで多くの労働者に損害が生じている。資本家の利益は労働者に返ってこない。「トリクルダウン」など存在しない。労働者はますます貧しくなり抑圧の連鎖は続く。
マルクスは資本家社会から労働者共同体による所有を唱えたが、これは所有が資本家から労働者に移動しただけで、アナキズムの立場からすると権力が移行しただけで同じことだと説明する。
これらの抑圧的な状況を受けてバクーニンは「破壊への情熱は想像への情熱」として革命を宣言する。彼は3度の死刑宣告を免れた人物だ。彼らはマルクスのプロレタリア革命をも否定し、プロレタリアートのさらに下、ルンペンプロレタリアートの存在を誇張する。
つづく・・・
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