アシスタント キティ・グリーン監督
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2019年の映画と聞くが、多少時間は経過したものの、こういう映画が地味にでも公開されることは極めて重要だと思う。しかも満席札止め。
映画を映画館で見ることの必然を思う。家にどんな立派な施設があったとしても、それはそれ。同じ意思でこの映画を見ようとする皆さんと空気を共有することにありがたさを感じる。貴重な時間だ。
映画は恐ろしく単調だ。良く目を凝らし耳を澄ませないとこの映画のつくり手への思いはもしかしたら及ばないかもしれない。キティ・グリーン監督がこの映画の前に作った「ジョンベネ殺人事件の真実」は、映画のオーディソンに来た俳優志望の人々へのインタビューで綴られるドラマ。画面に映る被写体が語る言葉と表情で見る側はドラマを推測するしかない。そしてこの映画もまた同じ。女性監督はこの映画で、冷徹なまでに主人公をスポイルしてゆく。朝暗いうちから家を出てオフィスで働くジェーン。このジェーンという名前にも意味がある。彼女はオフィスを掃除し、資料をコピーして人数分を仕分け、電話を取り、苦情を受け、上司から責められて時に謝罪文を書くことまで要求される。目の前にはとつぜん若い女性がデスクに座る。
映画は何も語らず、何も結論めいたことを示さない。
決定的なシーンがある。理不尽な事態が次々に起きることに耐えかねた主人公が人事の責任者に告発する。冷静で信頼できるこの人物とのやりとりで、部屋を出る彼女に「君は大丈夫」と声をかける。この言葉の恐ろしさと悲しさ、惨めさ、屈辱・・・・
これは会社という空間だけではなく、家でも学校でもどこにでも起きていることなのだ。それでもジェーンは表情を変えず、いや時々作り笑顔の影で彼女なりの抵抗を示す。遅くまでデスクで待機する彼女に内線電話がかかってきて「先に帰っていい」という。彼女はまた今日も暗い夜道をひとり家に向かって歩いてゆく。
これだけ書いても、この映画の片鱗すら伝えてはいないだろう。それほどこの映画は言葉や文字で伝えることの難しい映画だ。しかし、どんなに漠然とこの映画を見たとしても、彼女の押しつぶされそうな心理が誰にでもわかる。そして多かれ少なかれ、組織の中で生活するものなら、”名もなき”ジェーンの気持ちを察することは難しくない。女性よりも男性に見てほしい映画だ。心を揺さぶられる素晴らしい映画だった。
もとのアイデアはこれらしい。無視される女性の労働。
Jeanne Dielman, 23 Quai de Commerce, 1080 Bruxelles Trailer
おなじ手法のドキュメンタリー。
実際の現場や加害者の顔を見せない恐怖。
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