#ダリチョコ の映画とグルメ

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おかしゅうて やがてかなしき ② 岡本喜八の真実

第四章 戦中派



岡本喜八が語る戦争「NHK教養セミナー 昭和の20歳」


この動画が、この著書にもかぶっている。見応えのある映像だ。


ここからは岡本監督が東宝に復帰してから、戦争の実体験を背負いながら、数々の作品を作る映画の中の岡本喜八を紹介する。「独立愚連隊」「江分利満の優雅な生活」など・・・


戦争が終わって、世の中が急変する中でも岡本監督は冷静だ。


戦後は何でもデモクラシー、ヒューマニズム、としたうえで「日本が戦争に巻き込まれないためには中立であること。そして安保をなくすこと。」(雑誌「丸」1969年)


と述べている。村上春樹が岡本作品を評していて、


「60年安保の日本は分裂し始めていた。貧困から中流になって資本に飲み込まれていた。江分利は安保を引きずっている。無責任シリーズは”次へ行こうよ!”という映画。


血と砂」「日本のいちばん長い日」「肉弾」などを経て、いよいよ「激動の昭和史 沖縄決戦」の話題に向かう。ここで、この作品に影響を受けている庵野秀明の「シン・ゴジラ」に言及していて、岡本監督が牧悟郎という科学者の役で写真のみの出演で「私は好きにした。君らも好きにしろ。」という強烈なインパクトのある言葉を残したシーンは、最も岡本監督を抽象化している。


北朝鮮の平壌から命からがら脱北してきた五木寛之が、著者のインタビューに渋々応じて、岡本作品を語っている。


人間を突き放して見ないと本当の喜劇は生まれない


このあたりからいよいよ本著のタイトルであり目的に近づいてくる。戦争を経験して多くの仲間を失い、後ろめたく生きてきた岡本監督にとって、平和ボケで生きている人間を、どこか突き放して見ている部分がある。


喜劇は痛烈だと思う。見ているときはおかしくて仕方ないけど、おかしゅうてやがて悲しい・・・、というものをどうしてもやりたい。難しいけどね。(出会いと別れの人生学)


つまりはこういうことだ。
ダイナマイトどんどん」の独立愚連隊的な世界。野球は好きだけど野球にはおぼれまいとする人物たち。そして利重剛さんが関与した「近頃なぜかチャールストン」で、ヤマタイ国の外相が


ちょっと気がかりなのはあの軽快なリズムが、あの頃、いつの間にかミニタリズム(軍国主義)にすり替わったことが重なってねぇ・・・


というセリフも冷静だ。ヒトがある勢いで気持ちが高揚して”なにか”に誘われるように集団で進んでゆく恐怖をお笑いに変え、それを冷静且つ辛辣に社会を捉えようとする岡本喜八の姿勢を、彼の生い立ちから丁寧に追いかけて提示することには意味がある。


いままさにこの国は、岡本喜八が仲間を多く失った玉砕心理にあふれていないだろうか。勢いにのって”なにか”に漠然と乗ると、その先に何があるか冷静に考えるべきではないか。少なくとも、歴史の事実において、与党を支持してよかったためしはない。常に冷静に反対側から世の中を見るべきことをこの本は教えてくれる。


おかしゅうて、やがてかなしき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像 (集英社新書)
おかしゅうて、やがてかなしき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像 (集英社新書)
集英社



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