66kg　「春なんだなあ」

2024/03/01 06:00

昨日の日経「春秋」より。

学生らが楽しげに行き交い、花屋さんの店頭が色づく。小椋佳さんが歌う「春なんだなあ」は、そんな浮き立つような街の風景を活写する。作品の舞台は一帯に大学が集まる東京の神田駿河台で、作詞者は藤村渉。セゾングループを率いた堤清二さんの筆名のひとつだ。

▼その一節に、街で若者らの姿を目にしたことで「老人の顔にも赤味が」さす、という描写がある。大勢の若者が目の前におり、生き生きと過ごす姿は高齢者も元気づける。そこに未来があるからだろう。現実の日本はどうか。厚生労働省が先日、2023年の出生数が前年比で5.1%減り、75万人台になったと発表した。

▼戦後間もなく生まれたベビーブーマー、いわゆる団塊世代の出生数は年間260万人を超えていた。今は当時の3分の1に満たない。大きな理由が親にあたる世代の将来不安だという。結婚を避けたり、結婚しても子を持つことをためらったり。結婚せずに出産・子育てをする時の有形無形のハードルも、相変わらず高い。

▼神田駿河台のすぐ隣は古本屋街で有名な神保町だ。かつては学生向けに教科書や文庫本を並べた店が多く、歩く客も若者が目立った。近年は中高年客を狙い懐かしいファッション誌や趣味の本などを扱う店が増えている。元気な高齢者が活躍することは喜ばしい。しかし高齢者ばかりが元気な国というのも、ややいびつだ。

メディアが及び腰だからこうなんたんだろうよ。日経くん。