#テクノ・リバタリアン ③ 日本にはなじまない
- テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想 (文春新書)
- 文藝春秋
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PART4 ネクスト・ジェネレーション
最後の章で、著者は次世代のテクノ・リバタリアンたちのキャリアを紹介しつつ、様々な社会構造にアクションを施しつつあることを報告している。
資本主義、特に新自由主義社会が加速して、人々の報酬欲求は膨らむ一方だ。そして行動経済学はこの不確実性に対して人が大きな快感を得るようにできていることを立証している。カジノ(SNS)は自社のサービスへ依存させる究極の知識社会であり、これは搾取を生んでしまう。サム・アルトマンはここでUBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)という概念を推奨し、これで生活保護制度がなくなるはずだという。
さらに、リバタリアンは私有財産を強く否定し、共同体(コミュニティ)を再生することを目指す。ジェヴォンズもワルラスも私有財産に否定的だった。富のコストを分散させることで、総合的社会主義がやってくる。これによってコレクションの意味は失われ、モノは保有から使用価値へと変わってゆく。ここまでくるとほとんど共産主義社会を強くイメージさせる。モノに過剰な愛情を持つことにペナルティを与えるという考え。
これらには制度の変革が必要なわけだが、ここでQV(クアドラティック=平方根)という投票制度を紹介している。これは面白い。投票するのにボイスクレジットの2乗を必要とする投票制度。
6票 = 36クレジット
1票 = 1クレジット
として、自分の持つ票に応じて候補者に投票するだけでなく、落選させたい候補者にマイナスの票を投じることができるようにする。熱心な少数派が無関心な多数に勝てる選挙制度だそうだ。
PARTX(エックス) 世界の根本原則と人類の未来
ついにここまで来たか、という内容の本だった。刺激があまりにも強すぎて頭がついていかない。著者はそんな読み手を見透かしたように、「自由を恐れ合理性を憎む日本人」にこれらの考えは理解できないだろうと締めくくっている。
マルサスは「人口論」で、人口の増加に資源が追いつかないことを予測したが、富の拡大までは予測できなかった。これによる格差拡大も。それをテクノ・リバタリアンは情緒的ではなく論理的。数学的に階層を構築し、自由を生もうと考える。
自由に抵抗感を感じる日本人は、会社の愚痴を言いいながら終身雇用の奴隷となって組織にしがみつく。日本人は世界で最も仕事嫌いな国民なのだそうだ。なのに自由を嫌う。こうした社会にリバタリアニズムは受け入れられないだろうと著者は言う。
おしまい
橘玲さんの本は騙されてこれまで5冊も読んでしまったことになる。いずれも刺激的。
◆上流国民/下流国民 橘玲著(小学館新書): dalichoko
◆言ってはいけない 橘玲 (新潮新書) : dalichoko
インタビューも。いずれもかなり長い記事。
◆【橘玲】「人口の1%」のための超自由主義が、世界を覆い尽くす
◆【米大統領選】「ヒルビリー」バンスと投資家ティールの奇妙な関係、テクノ・リバタリアンはなぜトランプ支持? 作家・橘玲氏インタビュー(前編)(1/3) | JBpress (ジェイビープレス)
◆【米大統領選】机上の平等主義にうんざり、右傾化するシリコンバレー…テクノ・リバタリアンはなぜトランプ支持? 作家・橘玲氏インタビュー(後編)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)
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