戦時から目覚めよ① スラヴォイ・ジジェク著
- 戦時から目覚めよ 未来なき今、何をなすべきか (NHK出版新書)
- NHK出版
- Digital Ebook Purchas
佐伯啓思先生の著書「さらば、欲望」や四方田犬彦先生の著書「世界の凋落を見つめて」 で紹介されていたジジェクの本を見つけて読んでみた。
300ページにも満たない新書だが、あまりにも情報が膨大で且つ主張が読み取りにくくて苦戦した。読み終えるまで数ヶ月かかってしまった。
「未来を変えるには過去(の解釈)を変えるべきだ」という前提条件を置く。侵略戦争はなかったと言わんばかりの傲慢な姿勢で近隣諸国から懸念を示されるどこかの国のことを言われているようで恥ずかしい。歴史解釈にも謙虚さと寛容さと勇気が必要なのだと思う。
最近の報道などでもよむ目にする「ポリティカル・コネクトネス(政治的な正しさ)」をジジェクもキーワードに据えていて佐伯啓思先生の考えにも重なる。「政治的な正しさ」という傲慢な姿勢は、権力者に歯止めをかける目的の憲法をあらためて、国民を締め付ける道具にすり替えようとするあの国のことを言われているようだ。
第三章 黙示録の5番目の騎士
ヨハネの四騎士(疫病、戦争、飢餓=食料問題、死=人口増)という旧約聖書の訓えには、生物の過剰労働を抑制(奴隷制度や植民地支配への批判)などが読み取れるが、ジジェクはここに5番目の騎士を登場させる。それは誰か?われわれ人間だという。
この本でジジェクは、自身が生まれたスロヴェニアを意識しつつ、社会制度が政権交代などで変化する先で、戦争に至る対立構造も複雑に入れ替わることをここで示そうとしているようだ。ハンティントンの「文明の衝突」を引き受けた内容のようだ。
プーチンの狙いが欧州の解体であることは明らかで、彼が仕掛けている戦争の最後の目的もそこにあることは明らかだ。しかしこの戦略に力で対抗する前に、自分たちの足元も見直してはどうかと提言している。
つづく・・・
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