平等についての小さな歴史 ② 参加型社会主義
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3、奴隷制と植民地主義の遺産
ここは前半の注目ポイントで、水野和夫教授の著書にも大いに重なる。
要するに産業革命で爆発的な資本が膨張して、国際分業のために植民地政策(すなわち海賊)が広まったことがことの発端だ。植民地政策は軍事力を高め、そのための技術革新が進む。植民地では奴隷制度が定着する。他国を侵略し、自国の経済を補う周辺をつくる。
4、賠償問題
ピケティはここで「補償的正義」と「普遍的正義」というワードを使う。賠償とは第一次世界大戦後ドイツに(ケインズが反対したにもかかわらず)莫大な賠償を求めたことでハイパーインフレとなり、ナチスヒトラーの出現を招いたことに関連する。インフレが戦争に向かわせる要因となる可能性も否定できない。
遡ってアメリカの南北戦争(シビル・ウォー)後、北軍が南部を白人に管理させる人種隔離政策をとったことで、世界最強の軍事国家を築き上げることができたことをあまり知らない。フランスやイギリスの植民地政策も無償労働という奴隷制によって資本が蓄積されたのだ。
つまり「賠償問題」では何も解決しないということをここでは言っている。
5、革命、身分、階級
ここでは、いわゆる「特権」について学ぶ。特権を廃止した途端暴徒化した、という歴史もあることから、このあたりのパワーバランスは極めて難しい。特権階級を指示しないなら、金券主義的経済界に楔を打ち、「参加型社会主義」を構築することが望ましい。
6、「大再分配」 1914ー1980
問題は開いた資産格差を縮小させることだ。これを改めるために累進税を進めることを強調している。この本の肝となる部分だ。現在も事実上植民地状態(例えば日本)の資産と債務を生産し再分配する。これがピケティの言わんとしていることだ。没収に近い形で取り上げないと実現できないとまで言っている。
7、民主主義 社会主義
資本主義が民主的制度だというのは嘘でごまかしがある。金融や資本を自由化したことで、資本の暴力性だけが際立つ社会になってしまった。かつて冷戦状態だった世界のほうがまだ再分配がうまくいっていた。きっかけはサッチャーだ。サッチャーの保守革命に大衆運動は抵抗しきれなかった。この頃から税の累進性が後退し、格差が著しく拡大したのだ。しかし、ここでサッチャーを悪として片付けるのは簡単だが、むしろサッチャーをして何が彼女をそうさせたのか?そして当時彼女をなぜ多くの国民が支持したのかを分析すべきであろう。
ここまで拡大した格差に対し、資産を再分配するだけでは資本主義を克服できない。そのためには「参加型社会主義」を構築し、分権化した自主管理による民主社会主義を目指すべきではないかとピケティは言う。
資本主義も社会主義もどうしても中央集権化に向かってしまい、民主主義からどんどん遠くなってしまうジレンマを抱えているため、所有という概念を捨てて資本が権力と結びつかない仕組みを作り上げることが求められている。
つづく
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