密輸1970 リュ・スンワン監督
「密輸1970」
リュ・スンワン監督作品は「モガディシュ」の迫力ある演出、特に最後の銃撃シーンがとてつもなくすごかったが、あの映画で韓国側の参事官を演じたチョ・インソンがこちらの映画ではベトナム帰りの密輸商をすごいアクションで演じている。ラストのどんでん返しにもびっくり。あの映画も韓国と北朝鮮という対立関係の大使館員が第三国ソマリアを舞台にした作品だったが、こちらも利害が衝突する関係が強い個性で衝突しあうドラマだ。主人公のキム・ヘスは「国家が破産する日」でシビアな演技を見せたが、こちらではまるで違うキャラを演じている。
漁師が密輸にからむ話し、というだけでワクワクするが、そこに利権などが絡んできて複雑な展開を見せる。人間関係の複雑で繊細な部分が利権に重なる哲学的で倫理的な映画なのだが、実はコメディだ。大いに笑わせ大いに驚かせる。
残酷なシーンもあって、スクリーンを見ていると痛みが伝わる。そして海女である彼女たちの水中シーンはこちらも息を止めてしまいそうになる。主人公の女性たちは、男どもの命令で厳しい仕事を続けるが、その息苦しさがこの映画のテーマでもあるように思えてくる。この息苦しい社会を突破するため、ひっしにもがいて抗おうとする姿勢が清々しい。
そして結果的に彼女たちに味方するのはなんと!
ということで、後半の海中シーンの興奮は文字で書いても伝わらない。映画はなるべくなら映画館で見て、この迫力をぜひ堪能してほしい。
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