細田守監督『果てしなきスカーレット』レビュー:戦争と家族の集大成。

dalichoko(ダリチョコ)

果てしなきスカーレット(KINENOTE)


正直言って「これが本当に細田守監督の映画なの?」というほどの作品でした。見終わった直後は呆然とするほどの変貌ぶり。しかし、時間を置くほどに、これは細田守がずっと描き続けてきた「戦争と家族」という伏線を一気に回収した作品なのだと気づかされます。


東宝のマークのあと、ソニーとコロンビアのマークが出て、この映画が世界配給を意図して作られた作品であることが明かされます。潤沢な予算で制作された映画であることが、はじめから伝わってきます。


映画が始まり、画期的な映画表現、特にカメラと音楽にとてつもなく新しい手法が感じられました。馬に乗って疾走するスカーレットをカメラが移動して捉えるショット。映画館でしか体験できないような重低音の響き。荒涼とした死の世界に人物がポツンと立つ映像は、これまでの細田作品にあったキャラクターの甘さを一切排しています。厳しさ、憎しみ、そういった感情が強烈なインパクトで迫ります。


何より、この映画が明らかに戦争批判をしていることが注目に値します。憎しみを許しで覆い隠す世界観は、残虐な非人道的行為の裏返しと言えます。そして「許し」とは、すべての罪を飲み込もうとする聖書的な発想でもあります。「放蕩息子の帰還」を想像させる世界は、タルコフスキーの映画にもつながる深淵さを感じさせます。


スカーレットが復讐を誓うクローディアスの存在がとにかく見事です。役所広司さんの演技が光ります。世界各国に存在するクローディアスたちがスカーレットにつばを吐きかける。自らの命乞いしかしないクローディアスこそ、自分なのではないかと感じます。自分もまた、自分のためだけに生きている愚か者なのではないか——。


スカーレットが死の世界から蘇り、地平線の向こうまで埋まった群衆を前に高らかに宣言するシーンで映画は終わります。女性リーダーの登場です。しかし、どこかの国のリーダーはスカーレットとは似ても似つかぬ、好戦的な独裁者らしい。スカーレットが国民に語りかけるあのシーンだけでも、その人物に見てもらいたいものですが……届かぬ夢でしょうね。


憎悪のピラミッド


【果てしなきスカーレット】11月21日(金)公開~スペクタクル篇~


×

非ログインユーザーとして返信する