経済成長主義への訣別 ④ 自然の性向

経済成長主義への訣別 (新潮選書)
経済成長主義への訣別 (新潮選書)
新潮社


第八章 グローバリズムは人間を幸福にしない


ジョン・メイナード・ケインズは「国民的自給」という1933年の論文にこう書いている。


国際的分業がうまくいくのは、各国に著しい違いがあるときだけである。富が増加すると貿易の対象にならなものの割合が増加し、一次産品の重要性が低下するので、自給のほうが社会に必要になる


このようにケインズは保護主義に傾いてゆく。要約すると、自由貿易競争によって所得は減少してゆくことになるのだ。ケインズは1920年代のイギリスの不況の原因がグローバリズムにあることを見抜いていた。「神の見えざる手」で、自由主義経済の基礎をなしたと言われるアダム・スミスでさえ、「自然の性向」に従い、ふつうの人々(中間層)がそこそこ楽しむ社会が理想であって、人為的な重商主義を捨て去ったうえで「神の見えざる手」に噛ませるべきだと言っている。



終章 成長主義と訣別する


市場はもともと社会的存在で公共性のあるものだ。しかしこの市場をもまた資本の成長主義に飲み込まれてゆく。社会の中心に置くべきものは何かというと、それは「効率性」ではなく「安定性」であり、人間が存在する中心には大多数の雇用(労働)が据えられている。大多数の中間層が過剰な資本に惑わされず、欲望の限界を理解したうえで、中庸に生きることが望まれる。そのためには成長思想を捨てて、自らが社会的な存在となるべく生きるべきだという。


おしまい


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かなり手厳しい内容で、資本主義市場経済にどっぷり浸っている自分たちにとっては、肌触りのいい話しではない。終章では尊厳死についても言及されていて、善く生きることは、誰も経験したことのない「死」や欲望の限界を知るべきだということは理解できる。グローバリズムではなく内向き思考への変更を求める説は、まるで鎖国を推奨するような内容だ。しかしケインズも予言しているとおり、これは極論のようで現実なのかもしれない。

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