「賃金が上がらない国」
■ 賃金が上がらない国の理由
先日ラジオを聴いていたら、水野和夫先生が「賃金水準の考え方」について話していました。
先生は、いまのインフレ局面にもかかわらず、労働者の実質賃金が上がらないことを強く懸念しています。では、なぜ上がらないのか。
答えは非常にシンプルで、しかし厳しいものです。
行き過ぎた株主資本主義によって、企業が“労働”をコストとしか見なくなったから。
ROE(株主資本利益率)を上げよ、という圧力が世界から日本企業にも押し寄せました。
その結果、企業は株価を維持するために内部留保をどんどん積み上げ、現在では600兆円を超える規模になっています。しかし、その利益はどこへも還元されない。労働者には回らない。
私たちはこの30年間、ゆるやかに、しかし確実に、「労働価値が剥奪される社会」の中を歩いてきたのだと思います。
■ 1995年――日本の“転換点”
水野先生が繰り返し語るのが、1995年という象徴的な年です。この年に経団連が発表した「新時代の日本的経営」。ここから日本企業ははっきりと姿勢を変えました。
終身雇用
年功賃金
社員育成
長期雇用への投資
こうした日本的経営は“非効率”とされ、「労働はコストだ」という思想が支配的になります。企業は人件費を削れば削るほど利益が増えるわけですから、当然その方向へ進んでいく。
この価値観がその後の日本社会にどれほど影響したか。
結局、30年経った今、国民の6割以上が「生活が苦しい」と感じる国になってしまいました。
■ 政治はなぜ動かないのか
ここからが最も深刻な話です。
賃金が上がらないといっても、政策で改善できる部分は確実にあります。水野先生は、時限立法でも構わないから 「内部留保課税を20%で課すべきだ」 と提案しています。アメリカでは一定以上の内部留保に課税する仕組みもすでにあります。
では、なぜ日本では議論にすらならないのか?
企業献金に依存する政権
五輪談合で有罪となった「電通」を中心とする広告支配
富裕層課税をタブー化してしまった政治とメディア
こうした構造が、日本の政治を“変わらない方向”へ強烈に引っ張っています。国民の過半数が苦しんでも、政策が動かない。これが日本の最大の不幸ではないでしょうか。
■ 世界では何が起きているのか
ここで話題を一気に世界へ広げます。
少し前、ニューヨーク市長選で民主党のマムダニ氏(元ラッパー)が勝利しました。
この選挙で象徴的だったのは、若者の6割がマムダニ氏を支持したという事実です。
マムダニ氏が掲げた政策は、
富裕層への課税強化
労働分配率の改善
公共サービスへの再投資
まさに水野先生が言う「内部留保課税」の思想と共振するものでした。かつてバーニー・サンダースが提示した“社会民主主義的な未来像”を、若者が現実の政治選択として受け止め始めているのです。
一方、日本はどうでしょう。格差や貧困が政治問題として認識されにくい。
代替案を掲げる政治家が少ない。メディアは企業献金や利権に食い込んだ勢力を批判しない。
世界が動き始めているのに、日本は取り残されているようにも見えます。
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