ルノアール「泣かせない映画たち、大島渚賞」

大島渚賞の参加はこれが3回目。
これまでに観たのは、
いずれも、いわゆる“お涙頂戴”とは異なる作品でした。
黒沢清監督がトークイベントで語った「うんざりするほど多いお涙頂戴劇」という言葉が印象に残ります。
過去に観た2作品もまた、涙を誘うというより、胸に突き刺さる映画。
衝撃や残酷さというよりも、「観る側に突きつけてくる」作品です。
PLAN 75もそうでしたが、今年受賞された早川千絵監督の「ルノアール」もまた同じ系譜にあります。
対談で興味深かったのは、早川監督自身が「よくわからないまま作っている」と語っていたこと。
自伝的でありながら、その内実はあえて描かない。
主人公の少女は、泣かず、笑わず、反抗もせず、ただ大人の言葉を受け入れるだけ。
タイトルの「ルノアール」についても説明はありません。
この無防備で無警戒なドラマを、黒沢監督は「ホラー映画のようだ」と評しました。
時代設定は80年代。
しかし、ゲストの河合優実さんが語ったように、「いまだったら、もっと恐ろしいことになっている」。
つまりこれは、ひとりの少女の物語でありながら、この国そのものを映し出す作品なのだと思います。早川監督はそれを、手探りで掴み取るように作ったのでしょう。
いま、日本に限らず映画の現場は、出資やスポンサー、政治との距離など、さまざまな制約の中にあります。表現の自由は、確実に狭まっている。
だからこそ、この大島渚賞は、ぎりぎりの表現が許される貴重な場なのだと感じます。
今回も、早川千絵監督の思いに触れることができて嬉しい体験でした。
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「ルノアール」(KINENOTE)


