急に具合が悪くなる「会話劇だが言葉はいらない」

dalichoko(ダリチョコ)


8月30日、「シネマ秘宝館91」が開催されます。チケットはこちらからどうぞ。




公開からだいぶ経った土曜日の早朝に鑑賞。劇場はそこそこの入りで若い方も多かったです。濱口竜介監督の人気ぶりを示します。



とても美しい映画です。パリと京都を行き来するドラマ。そして言語が日本語とフランス語で会話されます。「ドライブ・マイ・カー」の劇中劇もそうでしたっけ?


とても長い作品です。インド映画なら休憩時間を入れるほどの長さ。しかし、2か国語で交わされる会話劇は極めて芳醇で、時間を忘れさせます。美しさは映像だけでなく、フランス語と日本語が織りなす響きにも宿っています。刺々しい会話劇だった「悪は存在しない」とはだいぶ空気が違います。


高齢者施設の責任者と余命宣告された舞台演出家の物語。偶然出会った二人の関係は、既存の価値観を根底から問い直すもので、「強欲資本主義」を痛烈に批判する内容です。この社会がうまくいかない理由を構造にフォーカスし、「資本論」を示唆します。『人新世の「黙示録」』や「テクノ封建制」など、このブログで紹介したことがそのままこの映画のロジックとつながっています。


長塚京三さん演じる舞台役者と彼の孫で自閉症の少年の関係も美しく、この少年の存在は映画全体に大きな感動を及ぼします。マリー・ルーが演出家の真里に日本語で質問するシーンで、長塚さん演じる清宮吾郎が「訳さなくていい」と遮るシーンが、この映画の主題なのではないでしょうか。会話を軸にした作品ではありますが、この映画の中心は言葉にありません。施設の入居者や働く人たち、そして自閉症の少年の存在と触れ合いそのものが映画の意味するところなのではないかと感じました。


タイトルの「急に具合が悪くなる」の意味も、重要ではありますが中心ではない。3時間以上この映画とともにした時間を有りがたく思います。


この映画は日本映画ではなく、フランス資本によって製作されています。いまの日本では、このような静かで挑戦的な映画に十分な資本が集まる環境は決して豊かとは言えません。その現実もまた、この作品が私たちに投げかける問いの一つなのかもしれません。


急に具合が悪くなる」(KINENOTE)


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