名探偵ポワロ　ベネチアの亡霊　ケネス・ブラナー監督

2023/09/19 19:00

Kenneth Branaghの「名探偵ポワロ　ベネチアの亡霊」を鑑賞。

A Haunting In Venice | Teaser Trailer | 20th Century Studios
確かに、ケネス・ブラマーはこれまでのポワロのイメージを一切変えてしまった。アルバート・フィニーやデヴィッド・スーシエ演じるポワロとは見た目も性格も違う。しかしここまで２作品でポワロを演じ、自ら監督するシリーズを通じて、ブラナーはよりポワロの繊細さと厳しさに加え、強い姿勢を彼なりにデフォルメしたようだ。

かつてこの映画となったクリスティの原作を読んだことがある。しかし、原作と映画は別物だ。部分的に原作をなぞるようなシーンはあるが、ひとつひとつが少しずつ形を変えている。したがって、原作と同じオチになるとは限らない。人物もまた然り。

おそらく多くの観客の皆さんは、これを純粋なサスペンス映画として堪能できるはずだし、映像としての楽しさや俳優の演技、そのほか映画としてのクオリティの高さを満遍なく味わうことだろう。しかし、クリスティの原作をリスペクトしつつ、ブラナーが敢えて原作を離れて表現した部分にこそ、この映画の言わんとしていることが隠されているように感じる。

それは前作「ナイル殺人事件」で明かされた、ブラナー版ポワロの暗い影、そして愛する者への強い感情などが、今回の作品に強く影響を及ぼしていることに気づけばわかるかもしれない。もしこれからこの映画を見ようとする方がいたら、前作「ナイル殺人事件」を見てから劇場に向かうことをお勧めする。ヒントは原作の「ハロウィーン・パーティ」が示す、悪霊から身を守るための祭典が、ケルト民族の歴史に遡ることだ。ハロウィーンの始まりはケルト民族（ベルファストのある北アイルランドを含む、アイルランド民族）にあることも重要な意味を持つのではなかろうか。