Zepp Tourで逢いましょう ② ♬風向きをかえろ!
言うまでもなく、「今、何処ツアー」は、アルバム「今、何処」からの楽曲を中心に構成されたライブだったわけだが、今回のライブは佐野さんの過去の楽曲を新旧織り交ぜて凝縮させたようなライブ構成。まずはオープニングに驚く。佐野元春さんらしく、古い楽曲を大きくアレンジを変えて演奏する。
なんと、アルバム「Heart Beat」から「君をさがしている」。
片手には宝石 もう片方の手の中では 凶暴な情熱が燃えはじめている
かつて佐野さんのライブでオープニングに使われたこの楽曲を、コヨーテ・バンドで初めて聞いたような気がする。そのメロディは原型をとどめず、まったく違う曲のように聞こえる。「でも今夜はいつもの夜とは違う」でかつて会場を興奮の坩堝(るつぼ)に巻き込んだあの曲ではない。すごいアレンジに圧倒される。
つづいて「Youngbloods (New Recording 2024)」。このビデオクリップもいい。かつてここでゲリラライブを行った映像が懐かしい。そしてニューアレンジの「ジュジュ」へ。
世界が静かに朽ちていくときに心がちょっときしむだけさ 君がいない
なんという残酷でシニカルで優しい曲だろう。ジュジュはもうどこにもいないのに、佐野さんはこの曲を歌う。「誰かが君のドアと叩いている」から序盤のクライマックス、アルバム「The Circle」のオープニングチューン「欲望」へ。
人々は憎しみあい 痛みさえも感じない
この街のジャズにまぎれて
グッドラックよりもショットガンがほしい
佐野さんは常に楽曲で意思を示し、ほかに何も語らない。1990年代にリリースされたこの曲の意味は、いままさに自分にしっくりくる。「武器とカメラ」 という記事にも書いたが、もし放伐が許されるなら自分にもショットガンがほしい。佐野さんのショットガンは彼の楽曲なのだ。つづいて演奏された「インディビジュアリスト」(Cafe Bohemia)も然りだろう。♬風向きをかえろ♬としか言いようがない。変わらない風向きを変えられるのか?この国は?
ここまではハートランド時代の楽曲を大人のアレンジに変えて、ここからはコヨーテ・バンドの楽曲で攻撃が始まる。
PAの調子が悪くて、佐野さんが何度か袖にいるスタッフに指示を出すシーンがあった。それでもコヨーテ・バンドの演奏は抜群でふたりのギターがそれぞれの役割をバランスよく分担し、聞かせる深沼さんと見せる藤田さんの演奏がしっくりくる。なにより高桑さんのベースが極めて個性的で印象深い。
「ポーラスター」から「世界は慈悲を待っている」この曲でも”欲望”について触れている。
GRACE
欲望に忠実なこの世界のために
若くて未熟なアナキストたちのために
今すぐ君の窓を開け放ってくれ
今すぐ開け放たないと時間はない。「愛が分母」から「銀の月」♬そのシナリオは悲観的すぎるよ♬。「クロエ」から佐野さんの「ロックしようぜ」の掛け声とともに「純恋(すみれ)」
狂おしい時代に生きている君 天使たちが静かに堕ちてゆく
壊れた現実は自由への旋律 あの寂しげな瞳に気づくのはいつ?
それが知りたい
それが知りたいが誰も教えてくれない。せめて佐野さんの楽曲にメッセージを読み取り自らを自覚するぐらいしかもう我々には何もできない。なざ♬風向きが変わらない♬のか、それが知りたい。
つづく・・・
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