Zepp Tourで逢いましょう ③ 虚栄心(Vanity)

とにかく今回のライブは情報が凝縮された密度の濃いライブだった。Zeppという小さめのホールということもあるだろうが、アレンジも演出も実験的な要素が強い。しかし来年20年目を迎えるコヨーテ・バンドは変幻自在で、どんな状況でもバンドとしてのクオリティを構築できる。すごいバンドだ。


終盤はそのコヨーテ・バンドがライブで何度も演奏してきた曲を淡々とそして激しいビートで解き放つ。


エンタテイメント!
La Vita e Bella


と続き、ややゆったりとしたメロディの「東京スカイライン」へ。そして「エデンの海」から個人的に大好きな「水のように」と「大人のくせに」をはさんで「明日への誓い」までアルバム「今。何処」からの楽曲を重ね、ラストの「禅ビート」へ。



ヒトとヒトが殺し合う世界なんて まるでこのままじゃ理解できない

薄いメタルのジャケット脱ぎ捨てて 元いた場所に戻っていくのさ


鳥のような翼はないけど 翔びかたは誰よりもわかってる



ここからアンコール。
驚くことに「ダウンタウン・ボーイ」のニューアレンジで驚き、次の曲の前にメンバーがこそこそ話し合って、なんとなんと「Vanity Factory」。これをライブで聞いたことがあっただろうか。沢田研二さんに提供した楽曲で、しかもアルバム「Someday」からの2曲続けて演奏するとは。あのアルバムにはじめて針を落とした(”針を落とす”の意味が若い方に伝わるだろうか)記憶がよみがえる。胸が熱くなる。そして最後は「アンジェリーナ」。1980年代の楽曲を集めて、敢えて「Visitors」からは演奏されなかった。


それにしてもなぜいま「Vanity Factory」なのか?虚栄心という会社組織。こんな会社に誰もが帰属する。アメリカに従属して洗脳されたこの国で働く奴隷たちがイメージされる。当時佐野さんがこの曲を作ったときと、いま彼がこの曲を演奏することの意味と価値はまるで異なる。しょうもないこの国の虚栄心(Vanity)に満ちた資本家と資本家をアテにする為政者(=偽善者)は、「世界は慈悲を待っている」に登場するアナキストたちにショットガン(欲望)を持たせれば解決するというものでもない。


このセットリストはよくよく考えると、とてつもない壮大なドラマを隠している。それを


革命

Revolution+1 足立正生監督 - 

青春ジャック 止められるか、俺たちを2 井上淳一監督 - 


と結ぶのは強引だろうか。もちろん佐野元春さんはそのことを言葉にはしない。語ることもない。ただステージの楽曲に意味を見るだけだ。



来年は佐野さんのデビュー45周年、そしてコヨーテ・バンド20周年の記念すべき年で、大々的なツアーも予定されているらしい。まだまだ佐野さんから目が離せない。



おしまい


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過去の佐野元春さんの記事を並べた。


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